星咲く宇宙を君と
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【小説】バンダナワドルディの休暇
◆デデデ城
バンダナが去ってから、8日目が過ぎようとしていた。
「今日も帰って来なかったなぁ」
シニアがだらだらしながらワドルディたちと寝そべっている。
「ポピー。気持ちはわかるよ。やっぱり君も、彼がいなくて、寂しいんだよな」
「ばっか。そんなんじゃねーよ。オレはあいつの代わりに毎朝大王の朝の挨拶させられてんだぞ!?
その度に(バンダナは)帰ってきたか?って、神妙な顔で聞かれてるんだぞ??そりゃ憂鬱にもなんだろ!!」
「はは。それは大変だ」
「お前…、初日はあいつの代わりにバンダナ巻いて、何でも申しつけろって言ったそうだな?次の日からは、その役目はオレに押し付けてるよな??
なんでそんなに他人事でいられんだ?もーっ!!」
シニアは手足バタバタさせている。
「普段、ヒマで退屈で死にそうと言っている君を見かねて、仕事を振ったんじゃないか。毎日充実してるだろう?」
「いやいやいや!そういう話じゃねーから…あれ」
窓を覗きながら文句を言っていた彼は、何かを見つけたようだ。
「ポピー?」
「あれ、あいつじゃん?」
両手に荷物を持ったワドルディが一人でこちらを目指して駆けている。
「おお…」
ドゥとシニアは顔を見合わせた。
◆
城門の橋のワドルディ達が、歓声を上げた。
「わにゃー!!」
バンダナさんがお帰りですよ!!
と。
そしてホールには、ドゥとワドルディたちが集まっていた
「バンダナ君!待ってたよ!!」
「わにゃにゃわにゃー!!」
ワドルディ達がどっと駆け寄ってくる。
「みんな、ーわあ!!」
駆け寄ったワドルディたちが彼を持ち上げて、胴上げが始まった。
「えへへ。みんな、これはお土産だよ。全員分あるから、あとで食べてね」
ワドルディたちがバンダナからお菓子を受け取って、大喜びしている。
「…バンダナ。」
彼はその声にはっとして、振り向いた。
デデデ大王が、階段を降りてきたところだった。
彼を呼びに行って一緒に降りて来たシニアは、彼の後ろからひょこっと顔を出すと、バンダナに向かって「よっ」と右手を上げた。
「帰って来たのか」
「大王さま。急にお休みをもらってしまって、すみませんでした」
バンダナは頭を下げた。
静かになる。
ワドルドゥが、バンダナの隣に寄ってきたが、彼を責めないでほしいと、口を挟もうかと迷った。
シニアも大王の後ろからドゥを見た。
二人は、お互い、同じ考えであることを確認すると、頷いた。
…大王は、彼になんと言うのだろう?
ぼくらが何かをするのは、その後だ。
その場の全員が、静かに見守っていた。
ドゥが見ると、大王は彼が預けた青いバンダナを手に持っていた。
「お前は、これからも、ここにいてくれるのか。それとも」
こうして離れてみたら、もっといい場所がみつかったのか。
出て行っちまうのか。
そんなことを聞きたいようだった。
「お前は充分すぎるほど、ここで力を尽くしてくれた。お前が決めたことなら、おれさまは止める権利はない。だから何も気にしなくていいぞ!」
「え?」
バンダナは、頭を下げたまま、口を開けた。
「お前は、真面目だし、賢いし、才能もある。きっとどこでもやっていけるだろう。その方が、お前の本領も活かされるだろうしな。だから、」
「勝手にボクの気持ちを決めないでください!!」
バンダナが叫んだ。
「え」
その場にいた全員が、唖然とする。
「確かに、まだまだこの世界には、素敵な場所がたくさんあると思います。
でも、ボクはここにいたいんです。
ボクは、ここが好きなんです。ここはボクの家なんです!」
「あなたのそばで、仕事をしたいんです」
「…!」
ドゥとシニアが顔を見合わせる。
ワドルディ達もお互い、同じようにしてから、バンダナを見た。
「そうか」
大王が、呟いた。
そして、持っていたバンダナを広げると、彼に頭からかぶせた。
「あの、大王さま、何を??」
「あ…おい動くなよ。歪んじまうだろ」
「…」
頭の上でごそごそしていた動きが止まったので、彼は顔を上げた。
「ほら、言わんこっちゃない」
大王は不満そうだった。
「…!!」
バンダナは、はっとした。
きれいに磨かれた床に、青いバンダナを巻いた自分が映っていた。
確かに彼の言う通り、結び目が、なんだか歪だ。
「今度はじっとしてろよ」
大王はもう一度やりなおそうと結び目をほどこうと手を伸ばした。
「とんでもない、これでいいです。」
彼はそう言って飛びのくと。
ホールの床に映った、自分をうっとりと見つめる。
その場にいた全員が、笑顔になった。
「はは、よかったなチビ!大王さまに直々にバンダナ結んでもらえてよ!」
さっそくシニアがからかってきたが、バンダナはそんなこともどうでもよくなってしまったのか、そんな彼にもえへへ、と笑いかけていた。
大王は、ドゥを見る。それに気づいた彼は、
…約束を守って下さって、ありがとうございます。
と、丁重に、頭を下げた。
バンダナの目から涙が溢れていた。
「大王さま。ボクは、ここにいて、いいんですよね」
「そんなの、当たり前じゃないか」
彼は、すこし視線をそらしたが、告げた。
「…おかえり」
おそらくそれが、彼の今一番言いたかった言葉だろう。
「これからも、よろしくな。バンダナ」
バンダナは、その言葉を噛みしめるように大王を見つめると、
「はい…!」
それは嬉しそうに、返事をしたのだった。
<バンダナワドルディの休暇・おわり>