星咲く宇宙を君と
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【小説】バンダナワドルディの休暇
◆デデデ大王の部屋
早朝。
「おはようございます、大王さま」
「?」
デデデは起きていたらしく、足音がした後、
「ドゥ?お前なのか」
そう言った後、ドアが開いた。
「!」
デデデは面食らう。
いつもはとくに頭になにもつけていないワドルドゥが、いつも自分を起こしに来るワドルディの、青いバンダナを巻いていたからだ。
「大王さま、ご報告します。
大変、急ではありますが、彼…バンダナワドルディは、私用にて、一週間ほど休暇を頂きたいとのことでした。」
「え?」
「事後報告になってしまい、申し訳ないのですが、彼は朝方城を出ておりますので」
デデデが、それを聞いて、
「ほう」
と呟くと、考え込んだようだった。
そして。
「わかった。ところで、お前、頭のソレはどういうことだよ?」
ワドルドゥの巻いた青いバンダナを指さす。
「彼が戻るまで、わたしを彼だと思って、何でも申しつけていただこうと思いまして」
「…?」
デデデは考えると、
「お前が?だが、ワドルディ達はどうするつもりだ」
と、彼の本来の任務について触れる。
ワドルドゥは、ふふ、と笑うと、
「彼らも、自分たちでできることはできますからね。たまには私が離れて、自分たちで行動させることも、いい経験になると思います。」
そう言った。
「ふむ…」
デデデは、反対する様子はなかった。
ドゥは続ける。
「私も、彼らがそれぞれ自分たちで考えて動けるようになると、とても頼りになると思いますので、たまにこうして仕事をさぼらせてもらっています」
ワドルドゥの言葉に、
「そうだな。あいつらにも自主性が備われば…。…。…ふーん?」
デデデ大王はその考えに感心していが、最後の問題発言を見逃さなかった。
数秒後、
ワドルドゥの頭には、大王のげんこつと思われる大きなたんこぶができていたが、彼は気にすることなくニコニコしていた。
無個性ワドルディと分類される、いわゆる、彼…バンダナを巻いた一人以外のワドルディ達は、本来闘うことには積極的ではない性質をしている。
その彼らを城の歩兵として訓練したり、住処や食事を提供するかわりに労働をさせるのだが、
それに対しても、指示待ちであったり、みんながやったらボクもやる、という傾向があった。
だからドゥのように、彼らを監督したり、指示を出す役目が必要だったのだが、
バンダナのように個性を持った存在や、ドゥや他のデデデの部下からの影響を受け、彼らは自分たちの協調性を活かしながらも、少しずつ、それぞれ自分の意志を持ち、行動することができるようになってきていた。
「…よろしいでしょうか?」
ワドルドゥは、確認するように主君を見上げた。
「バンダナは、」
デデデは、そこで一度区切ると、
「お前には、話してるんだよな?」
ワドルドゥを見る。
話してるんだよな、とは、彼が休暇をとる理由となった、”私用”の詳細を指していた。
彼は、何も答えず、主君をその大きな瞳に映す。
「じゃあ、それでいい。…だが」
デデデは、頷く。が、少しだけ言いにくそうに、
「ソレ。…まぎらわしいから、やめてもらえるか。
間違ってあいつを呼んじまいそうだ」
ワドルドゥの頭に巻かれた、青い布を指さしたのだった。
「なるほど、そうですか」
すみません、と、ワドルドゥは、その布を外した。
大切なものを扱うように、ゆっくりと丁寧に、折りたたむ。
「なあ。それ、おれさまがもらっていいか」
「え?」
「あいつ…もう、かえって来ないのかもしれないんだろ?」
「えっ」
ワドルドゥは驚いた。
「?…なぜ、そんなことをおっしゃるのでしょう?」
「ちょっとな、心当たりがあるんで」
「…」
そうか。
ワドルドゥは思った。
『…お前のことが、きらいだ』
バンダナワドルディから聞いたあの言葉も、きっと、大王にとっては彼が傷つくことを案じて言えなかった一言だったのだろう。
それを言ってしまったことで、彼が自分に嫌気がさして、出て行った。
そのように思っても仕方がなかった。うかつだった。
カービィとのライバル云々の話は、無事解決していたが、
その分、バンダナ君との関係については、ちょっとしたひずみが生じたようだった。
「そうですか…。」
ワドルドゥは、言葉を慎重に選ぶ。
「私から言えることは、彼はおそらく、あなたが思っているよりも、
ずっと強く、あなたを慕っているということです。
私としては、彼がこのお城に戻ってこないということは、まあ、あり得ないかと思っているのですが…。
とにかく、彼が帰ってきた時は、あなたから直接、お返し頂けるということですね?」
ワドルドゥは、折りたたんだ青いバンダナを、大王へ、両手で静かに差し出した。
「…」
デデデはそれを受け取ると、その、ただ一枚の青い布の、バンダナを見つめた。
「ああ、約束する」
デデデは、ドゥへ視線を戻した。
ドゥは微笑みかけながら
「では、お願いしますね。」
そう言った。
そして、大切な部下がもう戻って来ないかもしれない、と不安に思う彼に、
何も心配いりませんよ、という気持ちを込めて。
「大王さま。
あなたは、わたしと、…彼を 信じてくださいますか」
そう、問いかけた。