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​【SS】ライバル卒業宣言

◆デデデ城バルコニー ・早朝 季節は秋と冬の間ぐらい

 

うーん、と、うなっているデデデ大王

いつもの元気がなく、様子が深刻そうだった。
バンダナワドルディは、花壇に水をあげているところ。 
「おはようございます。どうしましたか?大王さま。浮かない顔をされていますね」

「いやな…そろそろあいつについていくのも、そろそろ限界かと思ってな」

「あいつ。それは、カービィのことですか。」

「ああ」

「おれさまがどんなに努力しても、策を講じても…あいつはお気軽に乗り越えちまうだろ。
なんだか、空しくなってきてなぁ」

そこまで言って、彼は笑いだす。

「はは、まあ、今までもそう思うこともあったけどな!いい年した大人が若造に張り合うのは、大人げないって」

だが、笑いは途切れる。

「別にそれでもよかったんだけどよ、なんか、さ…」

その顔は向こうを向いていて、見えない。

「……」

バンダナワドルディがその先を聞こうと口(どこにあるのかはわからないが)を開こうとした時。

「バンダナ…お前はどう思う?」

こちらを振り返った彼は笑顔だったが、バンダナワドルディが聞きたかった続きの言葉は、質問に変えてしまっていた。

「おれさまは、このままあいつのライバルでいてもいいのかな」

バンダナワドルディは、大王を見上げた。

一呼吸、置いて。まっすぐその人を見ると、

「それは…あなたが決めることです」

静かに、きっぱりとそう告げた。

「 えっ」

大王は、思いもしなかったという顔で固まってしまう。

バンダナワドルディは、そのまま話を続ける。

「あなたが彼を追うのをやめれば、その後に、同じような人が現れるでしょう。
別に、誰も困るわけじゃありません。」

「…」

大王はそれを黙って聞いていた。

「確かに、カービィには、これからも友だちや味方、時に、ライバルが必要でしょうね。
でもそれは、
必ずしも、あなたでなくてはならないわけじゃないのですよ」

「 …!」

 


「今までは、あなたがそうしたいと思って傍にいたからこそ 意味があったんです。

けれどもしも。これから先、その関係を嫌だと思いながら、しなければという気持ちで続けるのだとしたら。
それはきっと、お互いのためにならないでしょうね」

「…」

大王は、何も言い返せないようだった。

「大王さま。

わたしは、あなたがどんな道を選んでも、決して失望したり、傍を離れることはありません。

だからどうぞ、すきなだけ 悩まれて下さい。」

そこまで言うと、彼はふふっと笑って、付け足した。

「この際、カービィのライバル…”卒業”しちゃいますか?」

彼の、いつもの、温かくも力強い、嫌みのない、慈愛に溢れた笑顔だった。

「では、わたしはこれで…」

一礼すると、彼はその場から立ち去った。

「…」

「…そうか…」

「代わりなんて、いくらでもいるのか、あいつには。」

「でも、俺には…?」


 ◆カービィの家

ドアをノックしながら
「おーいカービィ。お前、暇か?暇ならおれさまと勝負し」

「ゴメン…」
遮って、扉の向こうから、掠れた声がした

「今日はムリ。 帰って」

「あ?なんだ?どうした 
声がおかしいじゃないか」

「いやぁ~ ちょっとね
風邪をひいちゃったみたいで…」

「かぜ…」プッ

「ほぉう!お前みたいなのも風邪なんかひくのかぁ」
馬鹿笑いを始める

「そう言うと思った」 

「しかし…なんでまた、そんなことになったんだよ?」

「うん…昨日、氷風呂に浸かる我慢くらべ大会に出たんだよ。その景品がアイスクリーム一年分でね。無事優勝したんだけどさ、冷凍庫に入りきらないから、全部一晩で食べちゃった。そのまま布団もかぶらずに眠っちゃって…起きたらこの有様ってワケ…ゲホッ ゴホッ うえぇ」

「入るぞ」
けほ、こほ、と咳をするカービィ

「相変わらず狭い家だな」

「!?」

「よくこんなとこに住めるぜ」

「ちょっとーだめだよぉ 入ったら」
うつるよー

「この家がせまいんじゃなくて、きみが、でかいの。ちょっとやせたらいいんじゃない」

「窓にはガラスを張ってないし。これじゃ夜風が入ってきて
風邪だってひくだろ」

「もー…何しに来たの?人ん家にケチつけに来たんだったら、とっとと出てけー」
(布団を頭からかぶる)

 

「そういやこの家、キッチンもないのか」

「まあ、いらないよね。いつも誰かのお家でもらうから」

「…」
そんな会話をしながら、大王は飾られた写真立てを見つける。そこにあった6枚の写真には、どれも自分が一緒に映っていることに気づいた。

「…」

アドレーヌやリボンたちとの旅。

バンダナワドルディ、メタナイトと四人でマホロアを助けようとした旅。

タランザやワールドツリーの民と映した写真。

ハルバードとロボボといっしょに写っている写真には、機体になぜか落書き仕様の彼のステッカーが貼ってあった。

そして、20周年、25周年の記念の時の記念の写真。

彼は思わず、立ち止まってしまった。

「ねー。ほんと、うつるからね。はやく帰ってよ…大王が風邪ひいたら皆、困るんじゃないのー」

と布団の中からごねるカービィ。

大王は、壁にかかっていたポンポンのついたニット帽とマフラーをとると、ベッドの側へやってきて、突然布団を引っぺがした。

「うわあっ!!」
急に布団をとられてびっくりするカービィ。間髪入れずにマフラーを巻き、ニット帽をかぶせると、自分の背中に乗せた。ガウンを上から被せるように羽織る。

彼はポーズを決めると、叫んだ。


「チェンジ!星のカービィ64モォォオドッ!!」

…ただのおんぶともいう。

「え???…何?」

驚いた表情のまま、カービィは呟いた。

「だまってろ」

乱暴な言い方をしたが、喋ると辛いだろ、ということだった。

『えー本特急はー病人約一名を乗せてーデデデ城に直行しますー。乗客のみなさんはー、振り落とされないようーしっかりとお捕まりくださいー』

彼が走り出したのと同時に、わざと声色を変えた、微妙な物真似具合のアナウンスが聞こえてくる。

「…」

…ああ、なんだそういうことだったのか。

カービィはようやく彼の意図を理解して、言われた通りにしっかりと捕まると、ふふ、と笑って瞳を閉じた。

…乗客のみなさんて。ぼく一人だけじゃないか。大袈裟なヤツ

そんなことを思いながら。

 


◆デデデ城

「わにゃ!わにゃにゃー」
城門を守っている兵士ワドルディ達が、大王さま、お帰りなさいと声をかけた。

「おう、ご苦労さん」
大王はそう言って、走り抜ける。


◆ワドルドゥ&ワドルディ達の休憩室


「なるほど、大王さまがそんなことをね」
バンダナの話を聞いたワドルドゥが呟く。

ワドルドゥは、バンダナワドルディと同じく古くからこのお城にいる人物で、
お城に最も多く住んでいる、無個性ワドルディと分類される、バンダナを巻いた一人以外のワドルディたちの監督や指揮を任されている。
監督や指揮と言っても、雰囲気はどこか保育園の子供たちと先生というもので、いつも穏やかで、彼らの中で起きる出来事もどこかほのぼのとしている。

ドゥと、バンダナと、無個性ワドルディ達は、お昼の訓練を終えて、皆でお茶をしていた。

「彼は、かなり無茶をして、カービィに勝負をしかけていたものね。
今までよく、元気でいられたと思うよ」
ドゥがそう言うと、

「うん…」
バンダナは飲んでいたお茶の缶を見つめる。

「まあ、わたしは…彼がカービィと張り合うのをやめても、この城の中はとくに何も変わらないと思うけどね」
ワドルドゥはそう言った。

「そ、そうかな?」
バンダナは、とてもそうは思えないというように、反論しようとした。が、

「でも、君はかわったじゃないか。バンダナ君」
ワドルドゥが話をつづけたので、そのまま続きを聞くことにする。

「ボクが?」
バンダナは聞き返す。

「そうだよ。…だって、あの大王さまに、『自分で決めなさい』と言ったんだろう?
それがすごいことだと思うんだよ。昔の君なら、同じことができただろうか」
ドゥがそう言って、そのとなりにいたワドルディも、うん、うんと頷いた。

「それは…確かに」
バンダナは、そう言うと。
昔の自分なら、何を彼に伝えたのだろう。そう思っていたところだった。

城の扉が開いたかと思うと、

「おーいバンダナァ!!」

と大王の大声がして、ドタンバタンと彼が走ってきた。
なぜか肩や頭がスカーフィーに噛みつかれており、何が起きてるのかよくわからない。

すまん、休憩中にとことわると、彼はバンダナを見て、

「おい、水と氷と…洗面器とタオル。それからあれだ、解熱剤を!」

「あの、大王さまいったい何が…!?」
バンダナは尋ねた。

「いいから、おれさまの部屋に持ってこい。大至急だぞ!」
そう言うと彼は行ってしまう。

バンダナは、大王の背中で咳をするカービィを見つけると、現状を理解した。
「わかりました!」

彼はそう言うと、パタパタと部屋を出て行った。

ワドルドゥはそれを、静かに見守って、
ワドルディたちに微笑みかける。彼らはきょとんと首をかしげた。

 

◆大王の部屋。

氷枕があてられたカービィは、

「うう…」

と声をあげると目を細めた。

大王はタオルで汗を拭く

「…」

「あー…きもちいぃい…」

目を閉じたままだったカービィは、うっすらと目を開けて、自分を看る温かい手の主を見つめた。

「ありがとう。まさか看病してくれるなんて…」


熱のせいか、目元が潤んでいて、涙が滲んでいるのではとも思えた。

「ウレシイ」

大王は彼が心の底から喜んでいるとき、笑顔の目尻が上がってつり目がちになるのを知っていた。

長年の付き合いでなんとなく把握していることだったが、それが自分に向けられることは数えるほどかもしれない。

まあ、普段意地悪をしているわけだから、自業自得ではあるが。

「…」


それでも、その数えるほどの経験が、大王にとっては一つ一つ、心に刻まれていた。

 


「フ、フン!まあ、国の平和ってのはな。国民の一人一人が元気ってことだ。
そうでないやつがいたら、そりゃあ、助けるさ。べつに、おれさまじゃなくてもな!」

「ふーん…」

「なんにもトクベツなことじゃない。プププランドの習わしの一つ。当然のことわりだ!」

「…わかったよ。ぼくはつくづく、いい国に住ませてもらってるんだね?」

「そーいうこった!」

 


「最近はね、ぼくのこと、ピンクのゲンジュウミンなんて呼んでる人までいるんだよ。

彼らにとっては…ぼくもこの国の一員なんだなぁって思えて、なんか、照れくさいな。
本当は、ぼくは、よそからきた旅人なのにね」

「!」

 


「お前は、」
背中を向ける

「そりゃ、大事な住民の一人だぞ!!? 皆にとっても、」

…おれさまにとっても。

その一言が喉から出かかって、あわてて引っ込める。

「…お前がヒーローでも、そうでなくても、
関係なく、な」

「…デデデ?」

カービィが、彼が言葉をつまらせた様子に気づいて、声をかける。


『カービィのライバル、卒業しちゃいます?』

バンダナの言葉が思い出されていた。

 


「なんか、きみ へんじゃない? 今日」

カービィは鼻声でそう言った。

「…」
…だいたい、なんだよ、卒業って。学校じゃないんだぞ。

大王の脳裏に、学校の卒業式のような映像が浮かんだ。
『では、デデデ大王くん』

名前を呼ばれ

『ハイ』

形式通り返事をして、席を立って、教壇へ向かう。

『!』

そこには、校長先生よろしく眼鏡をかけ、上着を羽織ったカービィがいた。

お互い、一礼をする。

『デデデ大王どの。

あなたは、ぼくのライバルとして、長年の間、自身を鍛え、努力を重ね、ぼくに寄り添い、ともに時を過ごしてきました。
その功労を称え、ここに卒業証書を授与します』

静かに証書を読み上げたカービィが、顔をゆっくりと上げた。

彼は眼鏡を外すと、

『今までありがとうね。デデデ大王』
そう言って、両手で証書を差し出した。
大王は、流れにしたがってそれを、一度受け取ろうとして、手を止めた。

そこには、

ぼくのライバルそつぎょうしょうしょ

と書かれていた。

「…いやだ…」

彼は絞りだすような声をあげた。

「?」

カービィが、もう一度彼をみる。

「…いらない…! そんなの…一生、いらないッ…!!」

彼はそう言って、ボロボロと涙をこぼしていた。

「!?」
驚くカービィ。当たり前だった。

「…ッ …!!」

彼が涙を流しながら下を向いて震えている理由が、カービィには全くわからない。

「えっ どうしたの?突然…」

呆然と、カービィは尋ねる。

「うるさいっ お前には、関係のない話だッ」
大王は、そう叫ぶとバタンとドアを閉めて出ていってしまった。

「え…ええ??」意味が分からない…と当惑するカービィを残して。

ドアの外には、ぐす、ぐし、とめそめそしている大王がいた。本当は看病を続けたかったが、涙がとまらないので、戻るに戻れず、それでドアの前に座り込んでいる…という様子だった。

「…?」

そんな彼に差し出された一枚のハンカチ。大王が気づいて顔をあげると、その先にいたのは。

「バンダナ…?」

 


◆デデデ城バルコニー

「やっぱり俺は、あいつのライバルをやめたくないんだ」

「能力があるとかないとか、そんなの関係なくて、
あいつと次になにやろうかって、考えてる時が
やっぱり一番生きてるって気がする」

塀の淵に立って。
「バカだって、思うだろ?」
バンダナははっとした。
彼の後ろは断崖絶壁だ。風にあおられて足を踏み外したら、命はない。

でも彼は、今までずっとそんな場所に立っていたのかもしれない。

いつ落っこちても、仕方のない場所で、一つの思いだけを追いかけて。

でも、それは。

「大王さま。

わたしはあなたのことが 大好きです。

どこまでも、お供したいと思っています。ですが」

「もしも”そちらへ”行かれるのでしたら

わたしは ご一緒いたしません」

彼だけでは、ないのだ。


「…?」

そちら?

「…」

「いえ。杞憂だったようですね。お気になさらないでください」

 


「!お前、おれさまが飛び込むとでも思ったのか」

わはは

「そんなことするわけないだろー?」

「だからお気になさらないでと…」

「仮に落っこちても、雑草のように復活するのが俺たちだろ。」

「ええ。でも、次もそうとは、限らないじゃないですか」

「」

「戻ってきて、くださらないかもしれないでしょう?」


「…」

 


「大王さま。あなたは、自分をバカだといいましたね。」

「ん?」

「その通りだと思います」

「!」

「でも。」

 


「それのなにがいけないんですか?」

 


バンダナワドルディは続ける。

「たとえ自分を馬鹿だと思えても、

大切な人について行って

そばにいたい、

力になりたいと願うことの

いったい 何がいけないんでしょうか…?」

「…」

「…」


「ああ…確かに、何も悪くない。

何も、…悪くないよ。」

「」

 


「でも、それは、お前のこと だよな」

「え?」

「俺のことを、追いかけて、どんな時も、ずっとそばについていてくれたよな。

お前には、どれだけ世話になったかわからない。支えてもらったかわからない。

だから感謝してるんだ。お前がいなければ、俺はきっと、ここにはいなかったはずだから」

「…」

「でもな。

お前は、俺を好きだと言ってくれたが、俺は、お前のことが…嫌い だ」

「!」

「まぶしくて。ただしくて、きれいで。

俺とはぜんぜん、違う生き物だ

ずっと そう思ってた」

「なんで、そん…」

「俺は!!」

 

「お前とは、違う。あいつのこと、大切だなんて…綺麗な気持ちで思っちゃいない

力になりたい?そんな、かっこいいことも思ってない。

時々、いや、しょっちゅうだよ、あいつのことは、憎たらしいって思うし 羨ましいし もし、いなくなったらせいせいするんじゃないかって、そう思ってるんだよ。」

「なのに」

「向こうが求めてきたときだけ、気が付けば、こいつには、俺が傍についててやらなきゃ、いてやるんだって、こいつには、きっと俺しかいないんだって、そんなことを思っていて。

都合がいいだろ、そんなの…?

お前は、俺の態度なんて関係なく、どんな時も、俺を支えてくれてたじゃないか。

だから、

お前みたいに、ただしくて、きれいないきものに、おれは、なれない」

 


「!」

 


「そんなことはありませんよ」

 

 

 

「あなたが綺麗だと言ってくれた、今までのボクの行いは。

ただ、ずっと 見た目だけ それを選んできたからにすぎません」

 

「え?」


「ボクだって、

あなたがカービィではなく、ボクを見てくれたらいいのにとか

あなたの自由を全部奪って、ボクだけのものにできたらいいのにとか

思い通りにならないのなら いっそ殺してしまえるだけの力があったらいいのに とか

そう 思ったことが …ないわけじゃありません」

「え…?」

 

「そ、そう…だったのか??お前が??」

「…ふふ、そんなに驚かなくても」

…いやぁ、ボクの部屋にはもっとすごい欲望があるけど、これ以上言ったらショックを受けるかもしれないから、黙っておきましょうかねぇ…フフフ

え、こ、こいつ、怖い!!怖いんだけど!!?

 


「でもね、それでもいいかなって思ってるんですよ。

そんな真っ黒な気持ちでも、ボクにとっては、生きていく力だったから。

あなたを傷つけたり、怖がらせることができたら、すっきりするのかもしれませんが

笑ってくれたり、喜んでくれた方が、ずっと嬉しかった。

だから、

これは愛なんだ、ボクを作っている大切なものなんだって

信じて来ただけなんです。」

 

「…」

 

「そんなに、あなたのものと違いますか?

全然、…きれいなんかじゃ、ないでしょう?」

 


「バンダナ…お前…」

 

「大王さま。誰だって、大切にしていたものをすべて捨ててしまいたくなることが、あると思います。

もし、あなたがそうしたくなった時は、ボクは止めません。

その代わり、ずっとあなたを忘れないし、一緒に作ってきたものも、思い出も、みんな遺して大切に、伝えていきますから。」

 

「だからボクは、そちらへだけは ご一緒しません」

「…」

 

「そうか」

 


「ありがとう。 ごめん、俺が、悪かった」

「いいえ、ボクの方こそ。こんなボクですが、ゆるしてくれますか」

「それは、こっちの台詞だよ」

 

 

「では行きましょうか。

彼のそばにいられるのは、あなたしかいないんでしょう?」

 


◆大王の部屋
二日後

「熱が37℃。平熱に戻ったね、カービィ」

「ホント?」

「言われてみれば、確かに楽になった気がする」

「よかった!」

「まったく、バカなことをするからだぞ!」
この季節に氷風呂の我慢大会なんて…

「お前は、おれさまのライバルなんだからな!その名に恥じぬよう、しっかり健康管理をしろよ!」

「なんで君の名に恥じないために健康管理をしなきゃなんないんだよ!自分で勝手にやるよ!!」

へへっとあっかんべーをする大王。

しかし、ふっとバンダナを見て、目配せをしてみせた。
「!」

「ほらぁ、病み上がりなんだから、まだまだゆっくり休んで行けよ、ピンク玉ぁ」
「なんだよぅ。心配してくれるんだったら、もっと素直な言い方をしたらいいんじゃな…」

「おっと」

ふらふらしたのをすぐ抱き止める。

「…たしかに…まだちょっとふらふらするかも」

嬉しそうに笑って

「気をつけろよ!ボウズ!」

 


ライバルそつぎょうせんげん

↓キュッキュッと油性ペンで何かを描きこむ音

ライバルそつぎょう「しま」せんげん

 

 

 

<おわり> 

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