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旅立ちの前に
学校卒業後、ジュニアはブーメラン使いのブーマーのところに弟子入りすることを決めていた。
これは、そのことを兄に打ち明けた日の話。
「兄ちゃんは、本当の母さんが育てようとしなかったぼくを、自分が母親だ!って思って、大切に育ててくれた。命の恩人なのに、それを全部隠して“バカな兄貴”でいてくれた。だからぼくは、いっぱい兄ちゃんにわがままもうらみごとも言えた。もしそうしてくれてなかったら、ぼくは兄ちゃんにもっと気を使っただろうけど⋯きっと肩身の狭い思いをしたと思うんだ」
ジュニアは兄を抱きしめて、
「だから兄ちゃん、ありがとう。つらいときには、ちゃんと言うんだよ。ぼくにだって言ってくれたら、優しくはしないかもしれないけど、ちゃんと聞くんだからね」
そう言って。
「大好きだよ、兄ちゃん」
と伝えた。
いつもはよくしゃべる兄は、こういう時は何も言えなくなる。
ただただ、愛しい弟を抱きしめて、涙を流しながら、
うん、うんと頷くのだった。
★
⋯あれ?なんでこうなってんの??
その夜。兄はジュニアを抱きしめたまま眠ってしまったのだった。
「⋯」
⋯離してって言えば離してくれるんだろうけど⋯言わないでいたらどうするかな⋯って思って放置してたらこれ⋯
「⋯あの⋯兄ちゃん⋯?」
ぎゅうう。
⋯あ、だめだ。これ言っても離してくれないやつだ
ジュニアは悟った。
「⋯」
⋯いや、さすがにね⋯?実の兄に向かって、“大好き”は言い過ぎとは思うよ?
でもさ、この人それくらい言わないと、たぶんわかんないもん。だけど⋯だからってこんな泣かなくても。
⋯まあ、いいか⋯もうすぐ会えなくなっちゃうんだし⋯今夜くらいは、大目に見よう⋯
そんなことを思ってると、兄はジュニアの頭をゆっくりと撫でた。
「⋯」
⋯ぼくも久しぶりに、子どもにもどるとするか⋯
ジュニアはそう思って、寝返りを打つと、自分も兄に抱きついた。
はっ
「⋯兄ちゃん。トイレ行きたいんだけど」
ジュニアが言うと、兄は両手で受け皿を作って、ここにしろといわんばかりに⋯
ゴンッ
ジュニアは頭突きを食らわして兄の腕を抜け出し、
トイレへすませると
「ほら、ちゃんと戻ってきたから」
兄の腕の中へ収まった。
それからも色々とあったのだが、ジュニアは自分の未来のために、胸を張って一歩を踏み出したのだった。
彼の旅立ちには、友人一同やお城の面々が顔を揃えて送り出してくれた。
兄はその後、デデデ城を離れ、独立して生活を送ることになる。
残りの人生を溺愛している相棒と、いつも一緒に過ごすためだとか。
…確かに、ぼくは普通の両親もいない。
だけど、それ以上に、いつだって、守って、助けてくれた人たちがいた。
帰ればバカみたいに待っててくれる兄とその相棒がいる。
「強くなって、帰ってくるよ 兄ちゃん」
小さくなっていく故郷を見つめながら、彼はそうつぶやいてた。