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ジュニアンの手紙 ラスト
ウィリえもん
さきほど あんたの車体が解体され 回収されたところだ
あんたの生前の希望通り、使えそうな部品は他のウィリーバイクたちに使ってもらうように頼んでおいたよ
返しそびれた いまさらレターセット、便箋数枚と、封筒と切手がワンセットだけ残ってたんだ
だからあんたへ送ることにするよ
正直 未来から来たバイクのあんたにこの手紙が届くか疑問だけどな
それに、もし届いたとしても 返事だって書けないだろうし⋯
でも、それでもいいんだ
あんたはほんとうによくやってくれたから
受け取れるなら、受け取ってほしい
俺が半ば八つ当たり気味に、あんたのことを、ポンコツバイクとかガラクタとか叫んでも、構わずにこにこしてたあんたは ものすごく鈍感なのか強靭な心の持ち主なのかどっちかなのかと思ってた
でも、これはあくまで想像だけどさ
いつかのあの時 未来から帰ってきて兄貴の死に間に合わなかったこと
あんたはきっと、そのエンジンが焼き切れそうになるほど後悔したんだよな
もしあの時あんたが、責任を負って自決したり、楽になるために自分の記憶を消したりしていたら、
俺は兄貴を殺したという自責の念に耐えられず、きっと兄貴と同じことをしたと思う
そして今度は、俺を支えようとしてくれた大事な妻に、深い心の傷を残してしまったはずだ
そうならなかったのは、あんたが希望に向かって、文字通り、そのタイヤを削って走り続けてくれたからだ
それにはきっと、あんた自身も自分への「許し」が必要だったんだろ
俺がそうだったように
あんたと俺は違う道で 一緒に走ってた
だからこそ俺も、兄貴への手紙を書き続けることができたんだ
そして生まれてきたポピスケのことを育て、一緒に幸せになる使命も受け取ることができた
俺は確信するよ
兄貴はあんたのことを嫌ってたからとか、どうでもいいから死んだんじゃない
ただ、あんたが兄貴に贈ろうとした無償の愛を、受け取るだけの自分への許しが足りなかったんだ
だって、ちゃんと受け取ってくれたんだろ
一緒に過去へ行って、子どもの自分を抱きしめた世界線の兄貴は、あんたを最期の時まで感謝して、抱きしめたのだから
心から感謝するよ
ありがとうな
兄貴のことも 俺たちのことも 愛してくれて
どうか、安らかに
あんたの新しい旅が 喜びと愛に満ちたものになりますように
魂の恩人⋯いや、『恩車』への
深い、感謝と敬意を込めて
あんたが愛してくれた
あんたの大好きな兄貴の弟
ジュニアン
数日後、彼の机に一通の手紙が置かれていた。
封を開けると、便箋一枚にでかでかと…だいぶゆがんだふにゃふにゃした文字で、
『 あ り が と 』
とだけ書かれていた。…ちなみに、「が」は左右反転している。
「…??」
裏を見ても、封筒を見返しても、差出人の名前は書かれていなかった。
「…どうやって書いたんだ?」
ジュニアンは誰からのものか、すぐにわかったらしい。
「…難しい『あ』の方は合ってるのに、なんで『が』が反転してるんだよ」
彼はそう言って、ふっと笑うと、
その便箋を折って、封筒に戻す。
そして、そっと、兄の祭壇へ供えたのだった。