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ジュニアンの手紙XX通目
兄貴へ
手紙を受け取ってくれてありがとう。
あれからもう何通目になるかな。
おかげさまで、俺はすっかり、実の兄貴にラブレターを書くのが日課のブラコン野郎になったんだ。
愛する兄貴を悲劇で亡くした可哀想な男じゃなくてな。
羞恥心もあの一通目に比べれば落ち着いたもんだ。あんたが喜ぶんなら、いくらだっていってやれるよ。
…いや、やっぱり面と向かって言わされるのは勘弁してくれ。
絵的にもおかしいもんな。
ウィリえもんが、過去から作り出した並行世界から、今の時代へ戻ってきたよ。
何十年もかかっちまったから、さすがに俺もそんなに生きてない。
ちゃんと…膨大な特急料金を払って帰ってきたわけだ。
ちなみにその資金は、工事現場で働いて稼いできたとかいうから、ほんとにタフなバイクだよ。
その並行世界でも、俺はあんたが隠してたことを突き止めて、結局受け入れられずに全く同じセリフを言って怒鳴り散らしたんだが、あんたは、
『あはは。バレちまったか。 ま、ずっと隠し通すなんて無理だよな』
そう、いつもの笑顔で言ったんだ。
『…しょうがないじゃん。赤ちゃんのお前はほんとに可愛くてさ…! 兄ちゃんの指をちっちゃい手でぎゅって握ってさ。 こいつはオレが守るんだ! むしろオレがママだ!!!…って思っちまったんだよ』
兄貴は笑いながらそう言って、
『あの時だって…いつもは夜泣きもしないお前がわんわん泣いて、親父を止めようとしてくれたんだって直感的に思っちまってさ。…そんなお前をあいつが殴ろうとするのを、絶対止めなきゃって、それで…』
『…でも、オレが勇気を出して助けを呼べてたら、お前はもっと、施設とか、里親さんのとこで…楽に生きられたよな…。』
そこまで言って、『わがまま言って、苦労かけて、ごめんな』と、兄貴は俺に謝っていた。
俺は「うるせえそういうことじゃねえ!!」って怒鳴って出ていったらしいが…
俺の言動は何も変わってないのに、あんたは笑ってた。
もちろん、傷ついてはいたのかもしれない。
でも、決して自ら死を選んだりしなかったんだ。俺の、罪悪感とか、やり場のないどうしようもない怒りとか…そういうのも、受け流してくれた。
ウィリえもんが、あんたにとって、弱さや辛さを見せられる相手になれていたからなのかもしれない。そうだとしても。
あんたが、あんた自身が…自分を肯定できるだけで…こんなに、違うんだな。
そうやって乗り越えた絶望だったけれど。
あんたは身体的にはやっぱり無理をしすぎてて。
そのあとあちこち病気が見つかって、余命が宣告されたんだ。
だからこの世界の俺は、もう反抗的な態度をやめるしかなかった。
俺は奥さんとの間に二人の子どもを授かっていて、あんたはよく面倒を見てくれたんだよ。
娘のほうが「おじちゃんと結婚する!」と爆弾発言をしてあんたがフリーズしてたら、
あのポンコツバイクは「それはだめです。おじさんの奥さんはわたしですから」ってにこにこ笑ってやがったんだぜ。
本当に、お前らの絆には頭が下がるよ。
でも、あんたはこの世界では、
あんな遺書を残すことなく、最後は苦しむことなく安らかに眠りにつくことができたんだ。
俺は、あんたみたいな人生を送る子どもがいなくなるように、残りの人生を使うつもりでいるよ。
戻ってきた…だいぶオンボロになったウィリえもんと一緒にな。
奥さんも理解してくれているんだ。スクえもんもいる。
俺はもう大丈夫だ。何も心配しないでくれ。
じゃあまたな。
あいしてるよ
あんたの愛する弟
ジュニアン