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君の海ゆく潜水艦
「いたい…くるしい…さびしい…」
ここは暗い海の底。
「でも…助けなんか呼んじゃいけないんだ…」
子どものポピーはそこでうずくまっていた。
そこへ、遠くから近づいてくる明かりが見えた。
「ポピー!」
彼の名を呼ぶ、その機械は、潜水艦のような姿をしていた。
「…きみは、だれ?」
ポピーは眩しい光に目をすぼめながらたずねる。
彼は驚いていた。この海には、自分以外に言葉を発する者はいないからだ。
「ここでは、はじめましてですよね」
彼女は明かりの強さを和らげると、
「わたしは、グランドウィリーバイク。”潜水モード”です」
そう言って微笑んだ。
「潜水モード…?」
確かにその姿は、一輪バイクを潜水艦のように改造したような形をしていた。
「あなたを迎えに来たんです。一緒に地上に行きましょう」
彼女の言葉に、ポピーは「え?」と口を明けていたが、
「それはできないよ」
そう言って、向こうを向いてしまった。
「どうしてですか?」
ウィリーはたずねる。
「おれは、この世界にとって、いらない存在なんだ。おれを捨てた本体は、心を捨てれば機械になれると思ってる。
おれが戻ることは、その役割を果たせなくなること。だから、戻ったってまた、ここに沈められるんだ」
ポピーはそう答える。
「…」
ウィリーは黙ってその話を聞いていた。
「でも、きみはどうしてここへ来てくれたの?」
ポピーの問いかけに、
「あなたがとても大切な人だからですよ」
ウィリーはそう答えた。
「あなたに本当に心から笑ってほしいから。そのためには、あなたがどうしても必要なんです」
「きみがそう思ってくれても、あいつはそうは思わないよ」
「はい。それでもいいんです」
「え?」
ウィリーは「それならわたしもここにいます」と言い、
「ここは寂しいところだよ」って不安がるポピーに
「でもあなたがいます。地上の世界もにぎやかで素敵ですが、それはわたしにとってすごく価値のあることです」って微笑む。
ポピーが返事に困っていると、
「わあ、見てください。ここにちょうどいい穴があります。わたしの車体(からだ)にジャストサイズです」
ウィリーはそう言って、そこにすっぽり収まってしまった。
「…」
ポピーはその姿を見て
…顔が半分隠れちゃってる
と心のなかで呟く。
その姿は、ちょっとだけ面白い。
「ここにいてもいいですか?」
ウィリーはその姿のまま、ポピーにたずねた。
「そ、そんなに言うんなら…好きに…したら、いいんじゃない」
ポピーはそう言って、ちらっとウィリーを見た。
「はい。好きにします」
ウィリーは笑顔でそう言うと、
「ここに来るまでたくさん泳いだので、少し疲れていまいました。ちょっとお休みしますね」
そう言って、そのまますやすやと眠ってしまった。
…へんな子
ポピーは心のなかで呟いて
…でも、全然いやな感じも、こわい感じもしない。
「ありがとう。こんなところまで来てくれて」
ポピーはそう言って、ウィリーの頭を撫でると、自分も休むために岩陰に戻っていった。