PWJ書庫
戦士の休息
「兄ちゃん、おつかれさま」
楽屋でジュニアとウィリーが待っていた。
「すごくよかったですよ。キュリオさんもすっごく感動してました」
「ああ、ただいま。でも漫才で感動って⋯それ違わない?」
ポピーは笑うと、
「ほんと⋯無事終わってよかったよ」
と肩をなでおろしたのだった。
★
その帰り道。
「いやー⋯兄ちゃんの寒いギャグをあんなにたくさんの人の笑いに変えるなんて、あのウィリーはとんでもない逸材だね」
ジュニアが真顔でそう言った。
「⋯」
ポピーがなにも答えないので、
「?どうしたの?」
ジュニアが様子をうかがう。
「⋯あいつさ、ひどいんだよ!! これでもかってくらい念入りに打ち合わせも練習もしたのに本番でアドリブ入れてきやがって⋯!!!最後なんて途中で寝たのかと思って焦ったよ⋯!!!」
「⋯」
「本当に、根はめちゃくちゃいいヤツなんだけどさ⋯いきなり謎のタイミングで全肯定で褒めてきて⋯こう、色々と心臓に悪いんだ!!!少なくとも、オレには!!!」
「⋯まあ、バニーちゃんはそういうところがありますからね」
ウィリーは苦笑いし、
「大変でしたね。わたしからも、本当にありがとうございます」
そうお礼を言った。
⋯バニーちゃん、きっと今頃疲れて眠ってるだろうな。
大勢の人が笑ってる、しあわせな夢を見ながら。
ウィリーは満足そうに友達のことを考えていた。
「まあね♡ウィリちゃんの頼みとなればこれくらい大したことねーよ♡」
ポピーはけろっと機嫌を直すと、
「な、ジュニア?次は『爆発!ポピーブラザーズ』で一緒に出ないか?兄ちゃんはやっぱりお前のツッコミが恋しいな♡」
「はっ 冗談でしょ!ぼくは兄ちゃんみたいにお笑いが好きなわけじゃなくて、『優しさ』でツッコんであげてるの!意味不明な状況や凍りついた空気をなんとかしてあげる、『応急処置』なんだよ!すっっごく神聖なものなの!」
「それ、あいつの言ってることと一緒じゃん!!バニーだってツッコミを空気を和やかにする武術って思ってんだから。お前ら絶対気が合うって!」
「全然違うもん!!ぼくは誰でも彼でもどーでもいいような群衆のために才能も労力も消費しないの!!」
「えっ」
「? なにさ」
「それって⋯じゃあ、大事な人⋯限定⋯ってこと⋯?」
「⋯まあ、そういうことかな」
ジュニアは誇らしげに腕を組む。
「つまり、『ぼくのツッコミは兄ちゃんのためだけ♡』ってこと⋯?」
「ん?」
「はぁっ♡な、なんっって大胆な告白⋯!!兄ちゃん、受け止めきれないッ♡⋯⋯かもっ⋯♡」
「⋯」
「⋯」
ジュニアとウィリーは顔を見合わせた。
「キッッッモ!!!!ちょっと、ウィリー助けて!!あいつ舞台のプレッシャーかかりすぎていよいよおかしくなったよ!!!」
「ジュニアくん、今日はわたしの実家でお泊りしましょうか。レックスくんも妹たちも喜びます」
「ほんと!?行く行く!」
「えええ!!?」
「ポピー、今日はかなりお疲れみたいです。ジュニアくんのことはまかせて、ゆっくり休んでください」
「そんな!お、オレは全然大丈夫⋯いや、さっきのはほら、冗談だよ!!⋯でも⋯やり過ぎた⋯かも⋯いや、あの⋯許して⋯オレのこと見捨てないで⋯一人にしないで⋯」
「いい? 今の発言は青少年の健全育成において完全にイエローカードだからね!!冗談とか関係ないの!!児相に電話しないだけ感謝してよね!!!でもカウンセリングはしっかり受けるから!!兄ちゃんのこと『今度こそ』要注意保護者でマークしといてもらうから!!気をつけないと可愛い可愛い弟の保護者の権利が永遠になくなっちゃうからね!!」
今度こそ⋯ということは、事あるたびに散々『児相』と言って兄を脅していたジュニアだが、今のところそれ関係の連絡はしていないということなのだろう。
「⋯はい⋯そうしてください⋯」
ポピーは頭を下げた。
「ポピー、今夜食べるごはんありますか?買って帰りますか?」
ウィリーがたずねると、
「⋯作り置きのがある」
ポピーはしょんぼり答えた。
「よかった」
ウィリーはほっとした。
★
「では、いってきます。明日の夕方には戻りますね」
「ふん!しっかり休んで頭冷やせよアホ兄貴!!」
「⋯ありがと⋯気をつけてな⋯」
ポピーは力なく手を振ると、自分の部屋に戻ったのだった。
ちなみに部屋についた途端ポピーは死んだように寝てしまったそうな。