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第10輪:クリスマスの難題





プププランドも秋になり、各地で紅葉が見られる頃になってきた。

「それじゃあ、この用紙に名前とサンタさんからほしいものを書いて持ってきてね。名前を間違わないように気をつけるんだよ」

デデデ城の教室。ワドルドゥ隊長が言うと、机と椅子に座っているワドルディ隊の面々は次々にほしいものを書いて立ち上がり、彼に持ってきた。



「ドゥおはよー」

ワドルディ隊のほしいものが書かれた用紙が入った箱を大切に抱えて王室に向かうワドルドゥにポピーが声をかける。

「ポピー、おはよう」
ワドルドゥは振り返る。

「今年もワドルディ隊の連中にプレゼント配るんだな?
デデデ“サンタクロース”大王さまは気前が良いいね」

「ワドルディたちは慎ましいからね。全員分叶えても毎年お釣りが来るくらいだよ」

ワドルドゥは箱を見つめる。

「君は、今年の弟くんへのプレゼントは決まったの? 」
ポピーを見上げてたずねた。

「んー。まだだけど、そろそろ言ってくるん頃なんじゃないかな」

「えらいね。毎年毎年」

「お前なぁ、褒めたって何も出ないんだぜ?」

ポピーはワドルドゥの頭をごしごしと撫でた。

「ま、お菓子の詰め合わせとかだし。大したことねーよ」

ポピーがそう言って帰っていく。


「お菓子の詰め合わせ、ね…」


ワドルドゥは呟いた。

ポピージュニアが”サンタさん”に何をもらったかは、毎年ちゃんと本人に聞いている。

「今年は何をお願いするのかな、彼は」





「兄ちゃん…」


その日の夕食。
ポピージュニアは深刻な雰囲気で兄を見つめていた。


「お、おう…どうしたジュニア?」

「サンタさんって本当は、いないの?」

「へ!?」

毎年素直にサンタクロースにお願いをしていた弟の、
まさかの「本当はいない」発言に、兄は動揺した。

「クラスの子がさ、サンタクロースを信じるのは小学校低学年までだって言っててさ…本当は…親が」

「おいおいおい!!」

ポピーは止めた。

「んなわけねーだろ! お前はいい子なんだからサンタだってVIP待遇でプレゼント持ってくるんだぞ?」

「そうなの?」

「そうそう! ほら、つまんないこと気にしてないで食べなよ。シチューが冷えちまうよ」

「よかった〜」

ジュニアはほっとする。

「もし本当に兄ちゃんが準備してるんだったら、今年のプレゼントはお願いできないなって思ってたんだよ」

「? そりゃどういうことだよ?」

「ぼく、今年は“おねえちゃん”がほしいんだ!」

「へ??」

「兄ちゃんさー、一人でぼくのこと育ててきたから、恋とかするヒマもなかったでしょ? いいとしして彼女も奥さんもいない、さみし〜大人になっちゃって、かわいそうだなって思ってたんだよ…!」

「へ?オレ?…いや、全然さみしくは…」

「痩せ我慢したってだめだよ! 
だから、ぼくがサンタさんにお願いすれば、きっといい人が兄ちゃんとお付き合いしてくれて、…そして、結婚してくれれば…! ぼくのおねえちゃんになってくれるんじゃないかって思ったんだ!!」

「え…えっと…ジュニアさん…?」

「サンタさんが兄ちゃんだったら無理だけど、本物だったら絶対にこのお願い、叶えてくれるはずだよ!」


…それはサンタクロースだって無理だろ!!

ポピーは心のなかで思ったが、

「ジュニア…あのな?」
何か、うまいこと説得せねばと声をかける。

が。



「やっぱり…無理、かなぁ、 そんなの」
ジュニアがしょんぼりと眉をハの字に下げたのを見て、思わずこう言ってしまう。

「…それがお前にとっての一番の願いなのか?」

そして、

「うん!」

ジュニアはきらきらとした瞳で答えた。


その次の日の朝、ジュニアを学校へ送った帰り道だ。

「それでその願い事を承諾しちゃったんですか?」

話をきいて驚いているのはグランドウィリー。

「だって、あんなうるうるした瞳で言われちゃ、オレ断れないよ…」

「そうかもしれませんが…叶えられることにも限度がありますよ」

「サンタクロースはお子様にとって万能神様なんだろうな…」

ポピーはがっくりと肩を落とす。

が、

「でも、オレの彼女はウィリーちゃんって決まってるからさ、君が『わたしがジュニアくんのおねえさんなんですよ♡』って言ってくれれば、解決すると思わない?」

「ポピー、ジュニアくんの思ってることは、きっとそういうことじゃないですよ」

「…え…」
ポピーの申し出はあっさりスルーされてしまった。

「でも、承諾してしまったのなら仕方ないし…
ポピー族のお嬢さんはプププランドの各地にいますから、この際思い切って会って声をかけたり、お見合いしてみるのも手かもしれません。
わたしもウィリー仲間に落ち合って、おすすめの子を聞いてみます。どんな子がいいか、希望を教えてください」

ポピーは次々と出てくる提案をポカンときいていたが、

「やだよ!」
と叫んで、

「えっ」

「ダメダメダメ、お見合いなんて。ほんの少し程度話しただけでつき合うとか結婚とか正気? そんなんじゃどんな子かなんてわかんないじゃん!」

「確かに、長い時間一緒にいることでその人のことがわかってくるものですが、どんな人も、最初は初対面です。その人のことを何もかも知ってたわけじゃないでしょう?
出会いにはフィーリングも大事といいます。少し話をして、気の合う子がいたら一緒に過ごしてみればいいじゃないですか」

「…」

「ポピー?」

「あのさ、覚えてる?」

「何をですか?」

「あの時…ほら、まだジュニアが赤ちゃんだった時、君『前の持ち主との契約を解いてもらったから、これからはそばにいさせてください』って言ってくれたじゃん」

「はい、確かに言いました」

グランドウィリーは答える。

「あれ、オレ、プロポーズだと思ってるんだからね」

「プロポーズ…!?」
グランドウィリーは目を丸くした。

「そーだよ。一生そばにいてくれるんでしょ? プロポーズじゃん! だからオレずっとそのつもりでいたんだもん。今更他の女の子なんて言われても納得しませんよ!」

「…」

グランドウィリーは呆然として

…どうしよう、私は、あの時まずいことを言ってしまったのだろうか?

そう思った。

そんなことはないと思うが、彼が何かをこじらせているのは間違いないだろう。

「ポピー。あれは、持ち主とか運転手としての意味で、恋愛的なものじゃないですよ。それに、わたしたちは恋愛感情を持たないので、恋人のように接してもらっても、あまり理解ができませんから…」
彼女は説明し、

ポピーはジト目を向ける

「ふーん…そういうこと言うんですね?」

子どものように頬を膨らませている。いい大人が。

「…はい。言います…」
グランドウィリーはそう答えるしかない。

「いいよー、もう。
こういう無茶苦茶な難題は、夢の泉に頼み込むに限るからね」

「え?」

「連れてってくれる?」
少しふてくされて気が済んだのか、彼はいつもの笑顔に戻っていた。

「レインボーリゾートですか。わかりました。
早速行ってお願いしてみましょう」

なんだか気まずいムードになってしまったものの、これから一緒に出かけるのなら仲直りの機会はありそうだ。彼女はホッとした。

いつもならこのままデデデ城に向かう道をUターンする。

グランドウィリーは「あっ」と思い出して、

「縁結びの神社の方が効果がありそうですが…」

と聞き直したが、

「レインボーリゾートでお願いします!!」

ポピーはそう答え、アクセルを踏んだ。





「スターロッドも大変だよな。毎年無理難題を言って来るやつらの願いを聞いて、叶えるか叶えないか判断したりとか」

「そうですね。全部ひとりでやっているのなら、ちゃんと休めているのか心配ですね」

まるでスターロッドを人だと思っているような会話をしながら夢の泉へきた一人と一台だったが、
スターロッドの御前についた瞬間ポピーはザッと土下座をした。

「スターロッドさんお願いします!
弟が、クリスマスプレゼントに、おねえさんがほしいって無茶苦茶なこと言ってくるんですよ! マジで困ってます!!
どうかあいつを説得してください!!」 

「あ、お願いの方を変えてもらうんだ…」
グランドウィリーはつぶやいた。

「ほら、今年のクリスマスシーズンにマリオの新作が出ますよね…? それの方が絶対に良いよって弟に言ってやってくださいよ!!」

スターロッドは願い事を言ったからといって、なにか言葉を返したりはしないのだが、
穏やかな光を放ちながらふたりを見つめているようだ。

「え、わたしですか?」
グランドウィリーは、『あなたはなにかありますか?』と言われた気がしてスターロッドを見上げた。

「ポピーに彼女さんができた方がいいと思うので、弟くんの願いごとを叶えてほしいです」

そう答える。
スターロッドの光が瞬いた。

「ウィリーちゃん!? オレが困ってんのにジュニアの味方すんの???」

ポピーは泣きながらグランドウィリーに縋り付いた。

「でも、叶えてくれるかどうかはスターロッドさん次第でしょう?」
彼女はそう言って、

「さ、そろそろ帰らないと、ジュニア君の下校時間に間に合わなくなりますよ」

土下座した状態で蹲っているポピーを何度か軽く押し上げた。

ポピーは力なく立ち上がると、

「はぁーい…」

と大人しく夢の泉をあとにした。



「ごちそうさまでした!」

それからしばらく経ったある日の食卓。
ジュニアはしっかりごはんを食べ終わった挨拶をすると、

「兄ちゃん、どう? 彼女になってくれる人はできそう?」
ニコニコして聞いた。

「…さ、さあな…」
ポピーは生返事を返す。

「ふふふ。ねえ、クリスマスイブの日にはうちに来てもらって、一緒にご飯とケーキを食べようね。約束だよ!」

楽しみだなぁとジュニアははしゃぎながら、

「じゃあぼく宿題やってきまーす!」

そう言って席を立つと、子ども部屋に行ってしまった。

「…」

ポピーはげっそりしながら皿を片付けた。



ポピーはデデデ城から一番近い商店街の中を歩きながら、

…あーあ。
ジュニアのやつはすっげー楽しみにしてるし、

ウィリーはこの際彼女つくれって言うし。

どうしたもんかなぁ

そう思っていた。手には、買い物袋。これから1週間分ほどのご飯の材料と、洗剤などの日用品が入っている。


二人は自分を思ってくれているのが痛いほどわかるし、その気持ちはありがたい。けれど、実のところ彼はこのまま弟の成長を見送って、静かに残りの人生を送りたいと思っていた。

弟のことならそれは嬉しいが、自分自身の恋愛を考え始めると、どうしても両親のことを思い出してしまう。
でも、それを話すわけにはいかない。

ジュニアには、自分たちはごく普通の両親のいる家庭で育って、今の状況は自分のわがまでまで家を出てきたためだと話しているからだ。
そのせいで弟には恨まれているが、それは問題ではなく、彼にとっては不幸の連鎖が断ち切れれば十分だった。


ふと立ち止まったゲームソフトのショップの前では、ショーウインドーにマリオの新作が大々的に宣伝されていた。


「頼むよマリオ…あんたも弟の頼みだったらなんとかするんだろ…? オレに力を貸してくれよ…」

ポピーがポスターのマリオに向かってぼやいていた、


その時だった。


「フォッフォッフォ」

年老いた女性の笑い声が後ろから聞こえ、振り返る。

「どうしたんじゃ? 若造よ。バカっぽい顔がさらにひどいことになっとるぞ」

「! 
あんたは…」




さて、待ちに待ったクリスマスイブがやってきた。

学校が終業式で早く終わるので、ポピーはいつも待ち合わせしている木のふもとでジュニアを待っていた。


チャイムが鳴る。

「おかえり、ジュニア。二学期もよくがんばったな」

「あれ、今日はグランドウィリーと一緒じゃないの?」

兄だけが迎えに来てるのを見て、ジュニアは首を傾げる。

「そういや話してなかったっけ。なんか、今年は実家の工場に帰って妹たちと過ごすんだってさ」

「そうなんだ! じゃあ、帰りは歩いていくの?」

「ああ。明日から冬休みなんだし、今日くらいはいいだろ?」

「うん、いいよ!」

ジュニアは兄のそばにつく。

…サンタさんはお願いごとを叶えてくれたかなぁ

彼は胸をときめかせていた。



「ただいまー!」
ジュニアが部屋のドアを開けて元気に挨拶する。
声が返って来ることはないが、習慣のようなものだ。

ところが、今日は違った。

「こんにちは、ジュニア君」

「!」

食卓の椅子の一つに腰掛けていた、赤いポンチョを羽織った女の子が立ち上がって、彼に挨拶をしたのだ。

「お兄さんにお呼ばれしました、イリーナといいます」

ポピー族らしいシルエットだが、赤い帽子とワンピースを着ていて、黒いポニーテールの髪の毛がとてもきれいな女の子だった。

「今日は、よろしくね」

彼女はニッコリと微笑む。

ポピージュニアの顔が煌めいた。

「兄ちゃん…!」

「まあ、そういうことでして…」
ポピーは真っ赤になって頭を掻く。

「すごい!とってもきれいな人じゃない!!」
ジュニアはそう言ってイリーナに駆け寄ると、

「ねえ、どこで会ったの? お付き合いしてどれくらい? 兄ちゃんのどこがよかったの??」

「おい、よせよジュニア!」
そんなに質問攻めにしたら困っちゃうだろ、と彼は窘めたが、

「ヨーグルトヤードの外れの町で。少し前に会って、お付き合いしてもらっているの。お兄さん、お話がとっても面白いから…」
イリーナは質問の一つ一つに丁寧に答えた。

「そうなんだ…! そんな遠くから来てくれたんだね」
ポピージュニアは感激して涙を浮かべている。

「笑いのツボが低い人でよかったね〜」

「えっ」

「おい、ジュニア!!」

「兄ちゃんの寒いギャグでわらってくれる人は貴重なんだから、大事にしなきゃだめだよ!」

「お前、言っとくけどその発言オレだけじゃなくてこの子にもダメージあるんだぞ!!?」

「ふふ、ふ…!」
イリーナは二人のやり取りを見て噴き出してしまっている。

「ポピーさん、本当に面白いの。それに笑顔が素敵でしょう?」

「!」
ポピーはそう言われて、

「そ、そうですか…ねぇ…」
と視線を逸らした。

「ふふふふー」
兄が褒められて、ジュニアは自分のことのように得意げだ。

「兄ちゃん、赤くなってないでご飯はやくたべよー」


彼らは一緒に晩ごはんを食べた後、ゲームをしたりケーキを食べたりして、とても楽しい時間を過した。

特にジュニアには、お兄さんとおねえさん(になるかもしれない人)と一緒に過ごすことができて、最高のクリスマスイブになった。


「もう帰るの?」

「彼女は親が門限に厳しいからね。無理言って8時にしてもらってて、これから送ってかなきゃいけないんだ」

ジュニアは目を擦りながら、

「うん、ぼくももう寝るよ」

そう言うと、イリーナの手を両手で握った。

「本当にありがとう、イリーナさん。兄ちゃんのこと、これからもよろしくね」

イリーナは、嬉しそうに微笑むと

「ええ。おやすみ、ジュニアくん」

そう言って、彼の頭を優しく撫でた。






「ポピー、わたし、ちゃんと彼女らしくできていましたか?」

「もちろんだよ。すっごい良かったよ」

「こんなに可愛くしてもらって、シミラおばあちゃんに感謝しないとですね」


そう、さきほどの“イリーナ”は、魔法使いのシミラがグランドウィリーに魔法をかけた姿だったのだ。
シミラはポピーには個人的に何度か借りがあり、グランドウィリーはよく彼女の長話をきいてくれていたので、
「めんどくさい魔法だが、数時間くらいなら叶えてやってもいいよ」と、変身の魔法をかけてくれたのだった。

ウィリーな…ィリーな… イリーナ…。まあ、ネーミングはそれらしく、でもバレない程度に適当につけたものだ。

「慣れない体は大変だったでしょ。ありがとうね」

色々所作の練習はしたが、階段は大変なのでポピーが彼女をおんぶして下っていく。

「いいえ。二人と一緒にごはんを食べて、遊んで…ジュニア君を撫でてあげられて。とても素敵な時間でした」

イリーナはそう言って、目を閉じ、頬をポピーの背中に埋めた。

しばらくそうしたあと、目を開ける。

「でも、わたしが元に戻ったら、イリーナとの関係はどうなるんですか?」

「問題なし。フラれたってことにすればいいから」

ポピーはそうキッパリと答えた。

「そうなんですか。それは、ちょっぴりさみしいですね」

「そう思う?」


「イリーナは、絶対にあなたをフッたりしませんから」

「…」

「…」


「…そうかもね」
ポピーは呟くと

「んじゃ、親が厳しいって設定もあるし、オレがバカっぽいからだめって言われたことしよ?」
と言って笑った。

イリーナは、この素敵な魔法がもうすぐ終わってしまうことに名残惜しさを覚えていた。

階段を下り終わると、ポピーはそっと彼女を降ろした。

「ここでいいですよ、ポピー」
イリーナはそう言った。

「そう? ちゃんと元に戻ったのを見ていかないと」

「大丈夫です」


「女の子の魔法が切れる瞬間は、男の人にはあまり見られたくないものなんですよ」



「そういうもんなの…?」

彼女は頷く。

「本でそう読みました」

確かに、シンデレラだって12時を過ぎると、
それまでのみすぼらしい姿に戻ってしまっていた。
それを見られるのは恥ずかしいかもしれない。
そういうことだろうか。

「わかったよ。じゃ、ここでお別れだね」
ポピーも彼女の嫌がることはしたくはない。素直に踵を返して戻ろうとする。

「ポピー」

「? なに?」

彼が振り返ると、


イリーナは、そっとその頬にキスをした。

「…!」


「では、おやすみなさい」
彼女は微笑むと、振り返っていつものお気に入りの寝床に向かって歩き出した。


「…」
ポピーは彼女に向かって手を伸ばしかけたが、その手を下ろすと、

「ああ。おやすみ、ウィリーちゃん」

そう言って、背中を向けると部屋へと戻っていったのだった。  



「グランドウィリー! メリークリスマス!

聞いたよ!妹ちゃんたちとのクリスマス終わったらすぐ帰ってきたなんて…大変だったでしょ。
もっとゆっくりしてきてもよかったんだよ?」

「はい。 ジュニア君のお願いごとが叶ったか気になったので、すっ飛んできましたよ」

それを聞いてジュニアは満面の笑みを浮かべる。

「へへ〜、すごいんだよ? 兄ちゃんてばちゃんと女の子連れてきてくれたんだから。しかもとっても可愛くて、兄ちゃんずっとデレデレしちゃっててさ〜」

「それはよかった…」
グランドウィリーは恥ずかしそうに目を伏せる。

ポピージュニアはふふふ、と笑うと

「ね。で、今日はマリオの新作を買ってもらうんだよ!」

グランドウィリーは目を開けると

「あれ? お願いごととプレゼントは別なんですか?」
 
「あたりまえじゃん! サンタクロースには叶えてもらったけど、兄ちゃんにはこれからなの!
…って、まだ来ないね、何してるんだろ?」

「お、オハヨー…ゴザイマス… 」

ポピーが柱からちらっと顔を出した

「うわ!兄ちゃんいつからいたの!?」

「ツイサッキ…デス…」

「大丈夫? 外国人みたいな喋り方になってるよ」

「メリークリスマス、ポピー」

グランドウィリーが微笑むと、ポピーは照れくさそうに顔を上げ、こちらへ歩いてきた。

「メリークリスマス…。
なーんかすっごいいい夢みたなって気分で、気分がふわふわすんのよね…」
と頭をかいた。

「奇遇ですね。わたしもです」


「なーに言ってんのふたりとも。昨日のことは夢じゃないんだよ!
それより、ゲーム!! はやく行かないと売り切れちゃうかも!」

「お前、ちゃっかりしてるよなー!サンタへの願いはちゃんと叶っただろー!?」

「だって夢の中で、今年のマリオはめちゃくちゃ面白いから買ってもらいなさいってサンタさんが言ってたんだもん。これは絶対にやらなきゃって思ってさ!!」

「あっー…」

「ふふ、ふ…!」

タイミングがだいぶズレているものの、スターロッドはジュニア、グランドウィリー、そしてポピーの願い事を、しっかり叶えてくれたようだ。 


「なんなんだよ!もーーーっ!!!」 




メリークリスマス!

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