top of page

【ドゥディ】君を縛る色

「愛されたい子」の続きです。
ワド→デデ、デデカビ(カビ♀)要素あり。
「呪い」を解くための彼らの奮闘。
デデデ大王とバンダナワドルディの出会いのエピソードを捏造してます。ご注意ください。二人の出会った街の名前を、既存のものにするか捏造するか迷ってます。
ドットレース素材5_20230724195606.png
ドットレース素材5_20230724195606.png
ドットレース素材5_20230724195606.png
ドットレース素材5_20230724195606.png
ドットレース素材5_20230724195606.png
ドットレース素材5_20230724195606.png
ドットレース素材5_20230724195606.png
ドットレース素材5_20230724195606.png
【ドゥディ】君を縛る色

【ドゥディ】君を縛る色


「僕は博愛主義じゃないから恋人には自分だけを見てと要求する。今までのように君のあこがれの人の話なんか穏やかに聞かないよ」

「君はまだあの人への思いを抱えて苦しんでいる。
僕にその責任を求めてくれるなら、君は自分にかかった呪いを解いて欲しい」

◆◆◆

その日の朝。

窓から差し込む朝日に、鳥の声。

「…」

バンダナワドルディは彼の言葉を思い出し、
瞼を閉じた。

どこまでも自分を好きで、
どこまで行っても親友で。
だけど聖人君子ではなくて、
好きな人は、ちゃんと独占したいと思っている。
そんな彼が自分を思う言葉の数々が、今の彼の心を満たしていた。

…あったかい…な

それまでの自分を捨てて、彼にすべてを捧げて、
二人でどこかへ飛び出して…今の自分が知らない世界へ行けたなら。

そうできたら、どんなにいいだろう。

けれど。


…大王さまへの愛も忠誠も捨てちゃうの?


自分の姿をした黒い影が囁く。

「…!」

それは気づけば自分自身そのものだった。

あの人に忠誠を誓い、そのすべてを肯定して、従う。
それが素晴らしいと思う従者の姿だった。

それを今更変えてしまったとしたら、



…みんなは君に、失望するんじゃないの…?


「…っ!!」



彼は時計を見た。

「そろそろ起きなくちゃ…」
重い体を起こし、彼は、朝の支度をする。


◆◆◆


…嫌なやつだな、僕は

…ドゥの視点から見れば、他の人を好きなまま、彼の優しさに縋って甘えるようなやつだし

…大王さまからしたら、勝手に忠誠を誓って、今度はそれを勝手にやめようと思ってて…中途半端で、自分勝手で


…こんな自分が愛されるわけがない

…誰にも


「おはよう、バンダナ君」

「!」

「昨日ちゃんと眠れた?」

「…うん」

「本当…?」


「…うん、大丈夫」

ワドルドゥは彼の手をとると、

「…あまり焦らないようにね?」

そう言った。

「え?」


「君は何も悪くない。だから、自分を責めないでね。
正しいよりも…自分がそうしたいと思った方を選ぶんだよ」


「…?」
バンダナワドルディは、言われたことがよくわからず、ポカンとしてしまう。


「それじゃあ、また夜にね!」

彼はそう言うと、先に階段を上っていった。


「…」
言われた意味こそよくわからなくても、
触れた手の温もりが、緊張していた彼の心を緩ませた。

◆◆◆


「おはようございます、大王さま」



「ああ、おはよう」


「バンダナ、今日は     に行くから同行してもらうぞ」

「!」

その場所は。

「当時は殺伐とした街だったが、今の様子が知りたいと思ってな」

…僕らが出会った街…?

「どうした? 行けそうか?」

「あ、はい! もちろんです。かしこまりました!!」


◆◆◆


「大王さま、覚えていらっしゃいますか?」

「何をだ?」

「当時わたしは、町を歩いていた不良たちに財布を取られてしまい、泣くことしかできなくて、」

「そんな情けないやつがいたのか?」

デデデは笑ってそう言うと、

「覚えとらんな、そんな間抜けのことなんぞ」

と返した。

「…!」
バンダナワドルディはショックを受けて固まってしまう。

「で、でも、…ボクは…」

バンダナワドルディは、話を続けよとうとして涙をこらえた。

…泣いてたら財布が戻ってくるのか?

そう言って取り返してくれたことを思い出す。

「その時のこと、本当に嬉しくて、ずっと覚えてます…!」

たとえあなたが忘れてしまっても。

「あなたはかっこよくて、すごく強いのに、ボクみたいな弱虫を見捨てたりしない、優しさがあって…!」

「…」

「あの時、あなたについてきてよかったって、今でも思ってます…」


「…お前はもうあの時の弱虫じゃないだろう」

「え?」

「…そんな過去にいつまで囚われてるんだ。お前は今の自分を生きればいいじゃないか」

「…え…?」

「オレさまも…あの時お前に会ってなければ、あのまま喧嘩ばかりして生きてただろうな」

「…今もそう変わらんか」
そう言って、笑うと。

「…だが、それはそれ、今は今だ。
今はお前たちとこうして城で楽しくやっている。
だからそんな過去なんぞ、振り返ったりしないぞ」

「!」

そういう意味だったのか。

忘れていたんじゃない。覚えているけれど、決してとらわれていない。

強い人だな。それに、自由だ。

「なあ、ワドルディ」


「…カービィに結婚を申し込もうと思うんだ」


「!」


「はっきり言って、あいつが了承するとは思えん。元旅人だから、どこかで身を固めようなんて思っていないだろうからな。まあ、断られたときは…笑い話にでもするさ」


「だが、万が一成功したら。
城に住ませるか、おれが出ていくか…だろうな。

どちらにせよ、お前にも、皆にも迷惑をかけるだろう。だから、先にことわっておこうと思ってな」




「…そうですか…」
バンダナワドルディは頷いた。

他の人と、結婚。

僕らが出会った思い出の場所で、
そんなことを言うのか。

バンダナワドルディは自分の心が、くしゃくしゃになっていくのを、どうにもできずに立ち尽くしていた。

「お前の意見、聞いてもいいか」

デデデが振り返る。

「え…?」

意見?


「…」

「なんかあるだろ? お前も。」

「まだあいつらには話してないが…ポピーはまあ、笑いそうだし、ドゥのやつは…聞いてもそんなに関心なさそうだしな。だからお前に、」




「どうしてわたしにそんなことをおっしゃるのですか?」

「?」

「そんなこと、ご自分の人生なのだから、ご自分で決めればいいと思います」

…違う、そんなことを言いたいんじゃない。

バンダナワドルディはそう思ったが、

「お二人がお城から出ていかれても、カービィがお城のお姫様になっても、僕らはあなたの決めたことに従うだけです」

「…」

「そうか」




「…あの時は、そうじゃなかったろ」


「え?」

「確かにお前はへりくだってはいたが、お前自身の気持ちを話してたよな。
泣き虫で、弱虫の割に、無駄に度胸を出して、思うことを返してた。
大したやつだと思ってたよ。
それだけは…今も思い出すな」


「そう…でしたか?」


「ああ。
おれたちは、王と従者なんかじゃなかったんだ。

いつからお前は、なんでもかんでもおれを肯定して、従うようになってしまったんだろうな」


「…それは、」

「おれがお前の素直な言葉を受け入れないだろうと。そう思うようになったのか?」

「そんな、わけでは…」

そういえば、いつからだろう。


注意を向けたいと思う割に、自分は理想の自分を演じていて。


「すまん、逆に悩ませてしまったな」

「!」


「今回の話も、オレさまが決めたのなら、それに従う。そういうことでいいんだな?」


デデデはもう一度確認した。


◆◆◆


「…いやです」

「え?」

「大王さまは、ボクだけの大王さまです…! 誰にもとられたくありません…」



◆◆◆

「そりゃ、カービィはいい子です! 強いし、かわいいし、魅力的で…言いたいこときっぱり言ってくれて、本当に素敵な子です!!
 
でも、大王さまとずっと一緒にいたのはボクなんです。誰にだって、とられたくない…」

「…!」


「最初は、二人だったからでしょうね。だから、色々話していたのだと思います。
でも、ポピーやドゥ隊長が来て、賑やかになった一方で、二人に負けないようにって、焦っていたんだと思います」

「…」

「理想の従者にならないと、って」

「…そうか」


「こ、こんなこと言って、ごめんなさい……!!
ボクは…」


「馬鹿だな」


「え?」

「どんなにあいつらがいいやつだろうと、お前にはかなわないよ、ワドルディ」

「…!」

「…やな男だな、おれは」
デデデは自嘲すると

「お前には感謝してるんだ。

あれから今まで、どれだけ世話になったかわからない。
こうして自称大王をやってこられたのも、お前のおかげだ。

お前は器用で、芯が強くて、頭もいい、その上で他人を思いやれるやつだ。
それだけ揃ってるやつなんてまあ、なかなかいないだろうな。
だから、オレさまなんか追っかけて、尽くしたりしないで、もっと幸せになったほうがいいんだよ」

「!」

「今まで、それがうまく言葉にできなかった。
そう言ってやれなくて、ごめんな」


◆◆◆

扉がノックされる。

「バンダナ君、起きてる?」


扉が開けるなり、バンダナワドルディはワドルドゥに飛びついた。
「起きてまーす!」

「わあ!?」

そして、そのまま押し倒す。

「?? …いったいどうしたの?」
ワドルドゥは彼を抱き起こしながら言う

「どうもしないよ! 早くお茶会しよう!」


◆◆◆

「へ〜、大王さまがそんなことを…」

ワドルドゥはお茶を淹れながら、

…ようやく伝えられたのか。
彼への感謝を

そう思った。

…ようやく。ねぇ

「…ものすごく不器用な人だと思ってたけど、彼も彼なりに変化があったのかもね」

彼は独り言のように言う。

「きっぱりフラれたけど、そんなにボクのこと思っててくれたんなら、まあいいかなって!」

「…」
あはははと、まるでポピーのマネでもしているかのような、彼らしくない妙なテンション。

…これは後から来るやつだな…

ワドルドゥは気づかないふりをして、

「今日はレモンバームにしたよ」

とカップを置いた。

「…ありがとう」
それを受け取って飲む。


◆◆◆

「そ゛れ゛でね??
僕らが出会った思い出の場所で、カービィと結婚するから…って話゛するんだよ゛??」

…やはり後から来るやつだったか。

予想通りで逆に安心するワドルドゥ。

「ひどいと思゛わない゛?? その時のことも、ボクみた゛いな弱゛虫のことなんて覚えてないって言うし、あんまりだよあの人は…!!」

そのままわーん!!と泣き出してしまった彼を、いつものように抱きしめて背中をポンポンと優しくたたく。

◆◆◆
バンダナワドルディがひとしきり泣き尽くした後、
ワドルドゥは言った。

「昨日話した二人を別れさせる件、気が変わったんなら引き受けてもいいよ?」

「それはだめって言ってるでしょ…」

泣き腫らしてガラガラになった声で彼は答える

「カービィにまだ知らない大王さまのだめなところを列挙して教えてあげれば、確実にプロポーズは失敗するよ?」

「だめだったら…」
 
「それか、君の気持ちをカービィに話したら、逆に譲ってくれる可能性も…」

「ねえ…?」
バンダナワドルディは彼を睨んだ。

「!」

「二人の仲は邪魔しないでって言ったよね…?」

「うん」

「カービィはボクらの前で見せないだけで、大王さまのことはすごく好きなんだよ」

「そうなの?」

「たまには褒めてあげたいからいいところを教えてとか言ってきたこともあったし。その時は何も知らなかったから、役に立てたかはわからないけどね」

「へぇ…」

「ボクがそんなことを言ったら確かに譲ってくれるかもしれないけど、すごく無理すると思う」

「なるほど」

「それに君はカービィからもらったお守り大事にしてたよね? そのことはなんとも思わないの?」

「それとこれとは話が違うから。何があの子にとって幸せかなんて僕にはわからないし」

「…」


「大丈夫だよ。もしするなら君が頼んでくれてからって決めてるし」
ワドルドゥは頷くと、


「…君は本当に、二人のことが好きなんだね」
そう言った。

バンダナワドルディはため息を付いて机に突っ伏した。
「思い切って…嫌いになれたらいいのにな…」

「…大変だね」
ワドルドゥはその頭を撫でて、

「君がとてもいい子だからだよ」
そう微笑んだ。

「本当にいい子だったら、こんな風に愚痴ったりしないよ…」
バンダナワドルディはそう言うと、目の前の…明らかにいい子ではなさそうな彼を見つめる。

「…君なら、僕の立場で同じこと言われたらどうする?」

「え? ◯すかな」

「え…!?」
物騒な言葉が飛び出して戦慄するバンダナワドルディ。

「や、◯っちゃうの?」
彼は震えながら聞き直すが、

「うん。
まあ、そこまではいかなくとも、確実に波動ビームは撃つよ」

「…そ、そう…かぁ」
全然いいこじゃないどころか、悪魔に魂売り渡してそうな彼が、逆に心配になってきた。



「!!」

バンダナワドルディは、はっとして。

「ね、ねえ? もし僕ら仮に恋人になったとしたら、もしボクが他の人のこと好きになったりしたらどうするの??」

「え…」
ワドルドゥは微笑むと

「うん、◯すよ」
と応えた。

「や、やっぱり???」

「…うん」

「はは、は…」

「そんなことしたくないから、友だちでいるんだよ」

「すること前提なんだね…」

「そういう批難は君が未練を断ち切れたら聞こうか」

「…はい…」
バンダナワドルディは頷いた。



「でも、今まで、大王さまの話とかしたとき、どんな気持ちで聞いてたの?」

「え? 『どうやって◯そうかなぁ』と…」

「あんなに優しく頷きながら!?」

「君が、恋心でそう言ってるのか、それともただの承認欲求なのかは判断が難しくてね。
でも君を悩ませてるのは事実だし、恋敵になりえる可能性もあるし、どちらにせよいつか◯さねばとは思ってて…」

「…怖い!! 怖いよ!!!」

『だから、言ったろ! オレもそいつが怖いの!!』
遠いある日のポピーの言葉が蘇ってきた。

◆◆◆

「…」
それでも、一緒にいると温かくて、

…やっぱり、

バンダナワドルディはワドルドゥを抱きしめると、
見つめ、お互いの(見えない)唇に触れようとした。

「!」


「…やめて」
ワドルドゥはぱっと離れる。 

「!」
バンダナワドルディは、はっとする。


ワドルドゥはドアを開けると

「おやすみ、バンダナ君」
と閉じようとした。

「待って…」

「…」


「…お願い…いかないで…」


ワドルドゥは踵を返すと、

駆け寄って彼を抱きしめる。


「…大好きだよ」


先日からの情緒不安定さはまだ続いているようで、彼自身も制御が効かなくなってるのだろう。
それがわかっているからこそ…。

「見捨てたりしないから、自分を確かに持って」

「…!」
バンダナワドルディは頷く。

…君を縛る「呪い」が、解けるまで、その階段はのぼらない。

そう決めた彼は、時に冷たくも、根気強く、
最愛の人を抱きしめるのだった。


(ここまで)

bottom of page