星咲く宇宙を君と
Kirby Fanfiction site
休む場所/贈り物
グランドウィリーがポピーに寝袋をプレゼントする、というお話です。
※先日pixivで非公開にした重い過去とかは出てこないのでご安心ください。
「ポピー?」
「ごめん、起こしちゃって」
彼は小声でそう言った。
グランドウィリーは小さな声で「いいえ」と答えて、
「…眠れないのですか?」
そうたずねた。
ポピーは笑うと
「ちょっと、やなこと思い出しちゃってさ」
…『ちょっと』…?
グランドウィリーはそう思ったが。
「そうでしたか」
いつも通り、何も知らないふりをして笑う。
「そういう日もありますよね」
つらくて眠れないから来ている彼に、
こんな時間に会いに来てくれて嬉しい、と思ってしまうことを、申し訳なく思いながら。
「ちょうどよかった。今夜は星が綺麗だから、見せたかったんです」
ポピーは窓から外を見た。
「ほんとだ」
デデデ城は山の上だし、空が近い。
実をいうと、星は晴れていさえすればいつもよく見える。
けれど、一人で眺めるよりもずっと綺麗な星空だった。
ひとしきり星を眺めたあと、彼はグランドウィリーのそばに来て、ピタリと寄り添って座った。
「…はー…」
「…?」
何やら満足げなため息を吐くポピーを彼女は不思議がる。
「いつもこうやってそばにいられたらいいんだけどなー…」
「それは無理ですよ」
グランドウィリーは即答すると、
「…あなたとわたしは違うんですから。そう思うんなら、いつでもそばにいられるポピー族のパートナーを見つけるのが1番です」
と、穏やかな口調だが、きっぱりと言った。
「わかってないなー」
ポピーはそう言うと、
「一度決めたひとがいるのに、その代わりを探すなんて虚しいと思わない?」
と口を尖らせた。
「…それは相手によると思いますけど」
そんなことを勝手に決められてしまっても困る。
ポピーに恋人や結婚の話を振ればこんな具合に平行線になっていた。
ただ、グランドウィリーはそれを嫌だとか、迷惑だと思ったことは一度もなかった。
「…休む場所がちがっても、あなたはわたしにとって、『おやすみ』と『おはよう』を言える大切なひとですよ」
彼女は答える。
「うん。…オレも」
ポピーもそう言って、目を閉じた。
「そうだ、ポピー。
今度の日曜日は、グレートビューティフルデデデ公園で野外コンサートがあるんですって。出店もたくさんくるからジュニア君を連れて…」
いつも話している時には必ず打ってくる相槌が聞こえないことに気付いて、
「え? 寝ちゃったんですか?」
何度も呼びかけるが、返事はない。
…どうしよう。このままじゃ風邪ひいちゃう
「もう…」
彼女にしてはらしくないため息は、彼ではなく自分自身に向けられたもの。
こんな時、ただ声を掛けるしかない、布団をかけてもあげられない体は、不便だな、…と。
でも、その寝顔を見ていると不思議な気持ちになる。
…いつもこんな顔をして寝てるんだ
そう思った時、
『いつもそばにいられたらいいのにな』
先程の彼の言葉が蘇る。
「…それは、…無理ですよ…」
彼女はもう一度そう答えて、
…でも、そうできたら素敵だろうな。
自分も目を閉じる。
…まだそんなに寒い季節じゃないから、凍えたりはしないはず。
ちょうど自分が風よけになっているし、万が一風邪引いちゃったときは、いまは助けてくれる人もいるから。
そういうことにしよう。とりあえずは。
「おやすみなさい、ポピー」
亡き父に幸運を祈り、彼女も眠りについた。
★
その次の週。
彼女は用意した「プレゼント」を見つめていた。
それは彼のことを思うつもりで選んだものだったが、もう一つ、見逃せない自分自身の気持ちに、たった今気づいてしまったのだ。
…もしかして、私は、彼にもっと隣で眠ってほしいだけなんじゃないの…?
「ウィリーちゃーん!」
「はっ!」
いつも通りの賑やかなテンションでジュニアのお迎えを頼みにやってきた彼。
グランドウィリーのそばにあるラッピングされた袋に気づく。
「ん?この袋は何?」
「それは…!」
彼女は観念すると
「あ、あげます! よかったら使って下さい」
そう言った。
「へ、オレに?」
ポピーはキョトンとすると、
「わーい、なんだろー」
と、袋を開けた。オレ、プレゼントもらうなんて初めてなのよー、などと言いながら。
「寝袋…?」
「はい。ウィリー仲間たちから、温かくて、体を傷めにくい素材のがあるって聞いたので、調達しました」
「…!」
「でも! でも、です…よ?
…こんなの、使わないほうがいいに決まっているじゃないですか。 だから、 あくまで、万が一の備えとして……あったらいいかなぁと思ったもので…!」
「…」
ポピーは、彼女と贈り物を交互に見つめる。
いつも落ち着いている彼女に似合わない、しどろもどろな様子。
自分への思いやりが痛いほど感じられていた。
「そうなんだ。
ごめんね、心配かけちゃって」
「大きなお世話でしたか?」
「まさか」
…こんなに思ってくれてるのに、他の人なんて探せるわけないじゃないか
彼は心の中で思い、贈り物を抱きしめた。
「ありがとう!」
そして。
ポピーは早速寝袋を開けてもぞもぞと中に入り込んだ。
「え? 今使うんですか?」
グランドウィリーは目を点にする。
「うわ〜あったかいね。秒で寝れるよコレ」
「…そ、そうですか?」
「うん…! 最高です♡」
「よかった…」
彼女はホッとして、
…寝袋に入って丸まってる彼は、なんだか、可愛いな。
そんなことを思っていた。
が、今はポピージュニアのお迎えが先だ。
「ポピー、行きましょう。ジュニア君を待たせちゃいますよ!」
「えー… もうちょっと入ってる…」
「ダメです! 出てください。今すぐに!!」
口調が保護者のようになってしまっているが、
「は〜い」
しまりのない返事をして、彼は丁寧に寝袋を畳んでシートを開けて中に収めた。
その後、その贈り物は、普段ベッドで寝る時も抱き枕のようにしているとよく眠れるということで。
彼が夜中にたずねてくることはだんだんと減っていくのだった。
グランドウィリーは、確かに少し残念な気もしたのだが…彼にとっての眠りの大切さを思えば、それはほんの些細なことだった。
(ここまで)
------------------------------------------------------------------------------
おまけ
「兄ちゃん、それどうしたの?」
「もらった。ウィリーちゃんがくれたの」
「そうなんだ。でもなんで寝袋なの?」
うっ…!
それを聞かれると、返答に困る彼だった。
「…今度キャンプに行こうって約束したんだよ」
「え〜!? それならぼくの分も必要だよね?? なんで兄ちゃんのだけなの??」
なかなか鋭い弟だ。
「お前の分は好きなの自分で選んでもらおうって、今度買いに行こうと思ってたんだよ」
「え〜…それホント…?」
「ほ、…ホントウデス」
…ごめんな!!
ポピーは心の中で全力で謝る。
「まあいいや。絶対連れてってよ? 約束ね!」
というわけで、彼らは近いうちにキャンプに出かけることになったのだった。