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2人をつなぐカツサンド?

表紙のイラストはリハビリラフ募集企画で描いたものです。
ありがとうございました。
ラフ提供:けいえぬ様https://twitter.com/misakikina
ラフ:https://x.com/misakikina/status/1743590414886854818?s=20
2人でピクニックをしている絵ということで、思いついたやりとりを文章にしました。
二人の話なのにバンワドくんよりポピーが喋ってる尺が多いので、書き直す気満々ですが、とりあえず書けたのupします。
最後のオチもけいえぬさんからの一言からいただいてまして、
https://twitter.com/misakikina/status/1743936588252696720
何から何までお世話になっております。

「え、今度の日曜に出かけようって?」


「そう!  お弁当持って、ピクニックとか、どうかなぁって」
うん、うんと頷くバンダナワドルディ。


「ワドルディ隊を連れて? なんだかすごくにぎやかになりそうだね」

「え、違う! 違うよ!!」

バンダナワドルディはブンブン首をふる。

「皆で行ったらそれはそれでたのしそうだけど…そうじゃなくて…」


「2人で?」
ワドルドゥは首を傾げた。

「そうそう!!」
バンダナワドルディはブンブンと首をふる。今度は縦に。

「…2人で…」

ワドルドゥはじーっと、バンダナワドルディを見た。

「だめ?」
バンダナワドルディが心配そうに訊ねる。


「もちろんいいよ。お誘いありがとう」

彼は笑顔で答えた。
感情はわかりにくいが、これでもめちゃくちゃ嬉しいのだ。

しかし、

「でも、2人同時にお休みもらったことってなかったよね」

彼はふと思ってそう言った。

「…そう思う?」

ふたりともデデデ大王のお城で働いている従者だ。
デデデの側近のバンダナワドルディと、ワドルディ隊と呼ばれるたくさんいるワドルディたちの面倒を見ているワドルドゥ隊長。
どちらも一人でそれぞれ仕事を請け負っているので、なかなか休みは取れない。もしとるとしても、どちらか一方。そうやってお互い気を遣ってきたことだったのだ。

「やっぱり、難しいかな」

バンダナワドルディが眉をハの字に下げる。

…いつも僕ばっかり話を聞いてもらってて、なかなかドゥのこと聞いてあげられないから、
一度一緒に過ごせたらよかったんだけどな…

そう彼は思っていた。


それを見て、

…そんなに残念そうにするなんて

ワドルドゥは思った。

…最近忙しそうだったし、大王さまもピリピリしていたし、色々もやもやを抱えているのかもしれない。
これは一大事だ、と。

「いいや」
彼はうなずく。

「それは頼んでみないとわからないよ。交渉してみる」


「えっ誰に?」







「はぁ!? オレにワドルディ隊の面倒を見ろって!?」

ポピーが大声を上げる。

ここはポピーと弟ジュニアが住んでいる部屋。
ジュニアは小学校でいないので、
ポピーとワドルドゥが2人で話をしていた。

「すみません、“お兄様”。こればかりは僕にとって重要な問題なので…」

「なにがお兄様だ! こんな時だけ敬語使うなっつの!!」

一応年齢的にはポピーのほうが上だが、普段はタメ口をきいている仲だった。
彼は一通りプンスカ怒ったあと、

「一応理由は聞いてやるよ。 なんで休むんだ?」

ジト目で聞いた。

「バンダナ君が誘ってくれたんです。一緒におでかけしようって」

「マジか! …」

彼は食卓の方へ行くと、テーブルに肘をついて目の前に手を組んで座った。
ある世界では”碇ゲンドウのポーズ”と言われるポーズだった。

「それは一大事だな。デートってわけか。おめでとさん」

「ごめん、そういう話じゃないから」

ポピーは要所要所でワドルドゥの話を聞いてきたため、彼のやや重い友情と、頑なに恋愛感情はないと言い張る様子から器用なのか不器用なのかよくわからないが…一途さと健気さについては理解していた。

「じゃなきゃわざわざ休みとって2人っきりで仲良くでかけたりしねーだろ?」

「バンダナ君は色々話がしたいんだよ。大王さまや“君が”苦労をかけるからね」

「なんでオレも含めるんだよ!?」

「この前、彼の刺繍の作品を見て、女の子みたいだって笑ったらしいじゃない」

「…あれは、褒めたつもりだったんだよ! オレだって家事はやるけど、あんなすげー芸術?的なのはできないからさ…。お前だって同じこと思ってるんじゃねーの? 女みたいだって!」

「彼は女の子よりも繊細で崇高で尊い存在だよ」

「…」

ポピーは複雑な表情を浮かべると、深ーい溜め息をついた。

「それはともかく、こういうとき、やっぱり“一番”頼れるのはやっぱりポピーお兄様なんです」

ワドルドゥはもう一度頭を下げた。

「…お前なぁ」
ポピーは口を尖らせつつ、振り返る。 


「無茶言うなよ。あんなにたくさんいるんだぜ。オレが行ったって言う事聞きやしないよ」

「ワドルディ隊の子たちは素直だから、よほど横柄なことをしない限り指示には従うよ」

「んー…」

「お願いします、お兄様」








「…ったく、一番、とか言って喜ぶのは大王さまくらいのもんなんだからなー…」


注釈)なぜポピーに代役ができるのかというと、一般的な企業で例えるとバンダナワドルディとワドルドゥがフルタイムだとすると、ポピーは弟を養っている分2人に短時間勤務のようなもので、…その分爆弾づくりなど危険物を扱ってるので危険手当がついてるみたいな…融通が効くんだと想定しております。


「まさか、ポピーがワドルディ隊を見てくれるなんて思わなかったなぁ」

道を歩きながらバンダナワドルディが言う。

「ああ見えて面倒見はいい人なんだよ」

ワドルドゥが答え、

「なんかお土産買っていかないとね」
と続けた。

「大王さまもたまにはゆっくりして来いって言ってくださったし」
バンダナワドルディはそう言って、うーーん、と伸びをする。

「それはよかった」
ワドルドゥは微笑む。

が、ふと

…あれ、そんなに深刻な話じゃなかったのかな?

そう思って、首を傾げた。






バスケットを開けるとそこにはバンダナワドルディが作ったサンドイッチが入っていた。

「あ、カツサンドだ」

ワドルドゥが言った。

「へへ。好きだもんね、ドゥ」
バンダナワドルディがひとつそれをとって、

「どうぞ」
と渡す。

「うん、大好き」

ワドルドゥがそう言ってカツサンドを受け取る。

「いただきます」
彼がそう言って食べようとすると

「カツサンドは2人をつなぐ架け橋のような食べ物なんだよ」

そう言って、バンダナワドルディは微笑んだ。

「え?」

ワドルドゥはきょとんとすると

「聞いたことないや。誰の言葉だっけ」
と訊ねた。


「ボクがそう決めたの」
バンダナワドルディは自分の分のサンドイッチを取って、
ポットからお茶を注いだ。

「じゃあ、いただきます!」

彼はサンドイッチを頬張る。

「おいしい! …って自分で作ったんだけどね。でも、一緒に食べるとおいしいよね?
空気もいいし。大王さまと一緒だと緊張しちゃってあんまり食べないけど、今日はもう一個はお腹に入るかなぁ」

ワドルドゥが目を点にしている間一人で楽しそうに喋っているバンダナワドルディ。

「…そうなんだ」
それなら間違いないや、とワドルドゥも好物のカツサンドを一口。


「おいしい?」


「すごくおいしいよ」



そんなささやかなひとときが、2人をつなぐ架け橋になるのはもう少し先のお話。


(ここまで)

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