星咲く宇宙を君と
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「ふわー…」
別方向から、大王さまがあくびをした。
「オレさまももう寝る。片付けは明日な。あ、ポピー、お前もちゃんと酔い醒ましを飲んどけよ」
「ふわーい」
へらへら笑っているポピー。彼はすぐ二日酔いになるのでこの薬は彼のものだった。
「はい、ポピー。これ少しもらったからね」
寝転がってへらへらしている本人に、水と一緒に渡してやる。
「いいよー。兄ちゃんは、やさしーからね〜」
兄ちゃんは、というときは僕らを弟君と勘違いしている。
というか、自分で起きて飲んでくれないかな。
バンダナ君はいつもはそこまで飲まないのに、今日はどうしたんだろうか…
「ドゥ、バンダナを頼んだぞ」
そういうと大王さまは部屋を出ていった。
「…はい。おやすみなさい」
僕は、頭の上に彼をひょいと担いで歩き出す。
「大王さまがさぁ…」
「うん?」
「カービィとお付き合いしてるっていうんだよ」
「ええっ?」
「…男同士で…?」
「ううん、違うの」
「カービィ、女の子なんだってさ」
「へぇっ…?」
変な声が出る。
「それは、初耳だなぁ」
「ボク、全然知らなくて。ずっと…何かと頼ってしまっていたし、なんかなれなれしくしちゃったかもとか思って…、」
「…友だちのつもりだったから」
「無理もないんじゃない?」
本人が言わなければわからないことだってあるし…
「…でも…」
「たぶん、カービィもそんなに気にしてないよ」
僕は適当なことを言う。
カービィの話はバンダナ君から聞いたぐらいで話したことはそんなにない。お城で大王さまと勝負や追いかけっこしてるのはよく見かけるけど。
「そうかな…」
「…性別をわかりにくくしたり、隠しているということは、何らかの事情があったのかも…」
「考えすぎじゃない? 言うタイミングがなかったか、言うのが面倒くさかっただけかもしれないよ」
「面倒くさいって!! 大事なことじゃないか…!! ちゃんと話してほしかったよ」
「まあ、そうだね。…」
友だちだから。
友だちだから言わなかった、ということもあるのかもしれないけど、あの子の場合は違うかな…
「女の子なのに、あんなに強いって、いいなって…ちょっと嫉妬しちゃってるんだ…」
「君が?カービィに?」
「…うん…」
「君はカービィとは違うじゃないか」
「…うん…」
「同じようになろうとしたら、おかしくなっちゃうよ」
「…」
「あ゛ーー…ボクも女の子に生まれたかったなー…」
頭の上で項垂れるバンダナ君。
「本気で言ってるのかい?」
驚いて尋ねる。
「…半分冗談、半分本気」
「…女の子は、色々と大変そうだけどな…」
「だけど、やっぱり可愛いじゃない。存在自体がこう、お花みたいにさ…!」
存在自体がお花…それはまた可愛らしい例えする。
僕にとってはそれは君なんだけど…、と言いかけてさすがにそれはとひっこめる。
「…そういうふうに思ってる子がいるとか?」
聞いてみる。
「い゛ません!!」
…あ、変なスイッチが入ったかもしれない。
「ボクはずっっっと大王ざま一筋ですッ!!」
「…そうだったね」
酔っ払ってるなぁ。
大王さまの話になると熱が入りすぎる。
ちょっと行き過ぎてる気がするが…他人のことはいえないので大人しく聞く。
「だから、大王さまと対等でいられて、いいなぁって。それに… 」
「お付き合いしたかったの? 大王さまと」
もしそれに「うん♡」とか言ったら…ここに置いていこうかな。と思いながら。
「…だけど、ボクが女の子だったとしても、大王さまはボクを選ばないと思う」
「? どうして」
「カービィみたいに、言いたいこと素直に言い合ったりできないから。ボクは平気でも、大王さまはそうじゃないでしょ」
「…それは、まあ」
「それにカービィが男の子だとしても、好きって言われたらそうしたと思うんだ」
「ええ…?」
「そうだよ…絶対そうだッ…」
うう、と嗚咽が聞こえて来た。
…思っていたより深刻だった。
「もしもの話だし、わからないよそれは」
たられば話をしたって仕方がない。
何か一つ条件が変わるだけで、状況は大きく変わってしまうから
…バンダナ君が女の子の世界…か。可愛いんだろうな。
でも、彼は今のままでも充分可愛らしいことは確かだった。
「あーーーー やだよーーーカービィに大王さまを取られたくないよーーーー!?」
僕の頭の上でジタバタするバンダナ君。
「こらこら、落ちるよ」
人の頭の上にいることを思い出してくれと嗜めつつ。
彼は一通りジタバタした後、
「…ボク、こんなでこの先このお城でやってけるかな…?」
と呟いた。
僕は笑う。
今までその台詞を何度聞いたことか。
まあ、大丈夫だろうけど…もし、だめだったときも、君はどこでもやってけるんだから、なんとかなる。
「それはゆっくり考えたらいいから」
部屋まで来た。
「鍵、ちょうだい」
「んー…まって…」
鍵を受け取って、バンダナ君をベッドに寝かせる。
頭痛薬と、ペットボトルの水。
ベッドの傍のミニテーブルに置く。
すっかり眠ってしまったようで。
「おやすみ、バンダナ君」