星咲く宇宙を君と
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08
★
僕はバンダナ君に手を引っ張られて彼の部屋に来てしまっていた。
大王さまの注文ミスにより、今夜はお城の全員が、ホットミルクを飲むことが義務づけられていた。
そのため、テーブルにはマグカップが2つ、湯気を立てている。
「…」
その湯気を見つめながら、思っていた。
…あんな話をしてしまったあとで、なぜ僕はここにいるのだろうか。
すぐにここから出ていかなくちゃいけない。
そう思うのに、体が重くて、いうことをきかない。
「いやー、今日はホント疲れたよね〜!」
バンダナ君はマグカップを持つと、一口飲んで
「大王さまも、もっと早くワドルディ隊を呼んでくれたらよかったのにね? あそこまで運ぶのもなかなか大変だったもの」
…あ、口の周りが白くなっている。
「あの、バンダナ君?」
そのことを言おうとして、
「さっきの話の続き、だけど」
バンダナ君は(口の周りが白くなったまま)、話を続ける。
そういえば、後で話そうと言って言っていたな。
「あのときの本…ボクのお気に入りの本のこと。お話の一つに、主人公が大変な目に遭いながら強い人に成長していくお話があって、…」
とりあえず、ハンカチを出して彼の口のまわりを拭いた。
「…!」
バンダナ君はきょとんとしていたが、理由がわかって恥ずかしそうにしたあと、思い出して続きを話し始める。
「…その子は、優しい子ではあるんだけど、すごく臆病で泣き虫で、何度も何度も挫けそうになるんだ。もうなにかも嫌だー! って…わめいたり…全ッ然かっこよくないんだよ」
残念ながら、もう話の内容は覚えてない。もしかしたら、読んでなかったのかもしれない。
こんなふうに覚えててくれるなら、しっかり読んでおけばよかったな。何しろ、君が好きな本なのだから。
だけど、その話を聞いていて、ふと
…その子、なんだか僕と話してる時のバンダナ君みたいだな
と、口元(?)が緩む。
「…でも、その度に、その子の親友がね、そばで、話を聞いたり励ましてくれたりしてくれるんだよ。」
「え?」
僕は驚いた。
「その親友の言葉が、優しくて、温かくて…。読んでてボクも何度も勇気をもらってた」
「…」
それは、なんだか…。
「まるで、君みたいだなって…」
「…!」
思いがけない、信じられない一言だった。
いや…? 納得できる部分も、ある…かもしれない。
…もしかして、初対面の僕に、そう日も経たないうちに気を許して、頼ったり、弱音を話してくれたのも、
その本の親友の面影を僕に重ねていたからだったのだろうか…?
そうだとしたら、僕はその本に感謝しなければならない。
…だけど、
「…僕は、その親友みたいに素敵じゃないよ」
その親友は、友情で主人公を助けていたはずだ。
そんな人に例えられるほど、僕はまともじゃないのだから。
バンダナ君の顔をちゃんと見れなかった。
「そんなことない!」
「えっ?」
「…君がいてくれて、どんなに心強かったか…君の言葉に勇気づけられたか…。」
「君は、ボクは強い人だって何度も言ってくれたけど、本当は、泣き虫で、大きなお世話ばかりしてて」
「今のボクがいるのは、君がいてくれたお陰だよ…?」
「…」
…ああ、やっぱり綺麗だな
流れる涙に触れようとして、
「ありがとう、バンダナ君。
そう言ってくれて…すごく嬉しいよ」
手を止めた。
…それは、僕が触っていいものじゃない
そう思ったからだ。
…でもね? と言葉を続けようとしたときだった。
「これは、もしかしたら、呪いみたいに…君を縛りつけるかもしれないことなんだけど…」
「えっ?」
呪い? 縛る…?
バンダナ君からにしては、少し仰々しい言葉が飛び出して驚く。
「もし、嫌だったら、…ちゃんと逃げてくれるかな…?」
「…?」
僕を縛り付ける、呪いの言葉…?
そう聞いて、考える。
君に迷惑をかけたから。
困らせたから。
二度と人を好きになってはいけないという、
罪の十字架のようなもの、とか。
納得がいった。
「わかったよ。…話して」
僕は頷いた。
君が何を言ったって、僕は平気だ。
この城を去った後も、その先でも。
そう思っていると。
「…どこにも、行かないで」
「えっ?」
「これからも、ここで、一緒に、ボクのそばにいて…!」
「!」
気づくと、バンダナ君が、僕に抱きついていた。
「ボクは泣き虫で臆病だけど、君がいてくれたら、もっとがんばれるから…!」
「…」
「…お願い…!!」
「…」
「…」
…これからも、君のそばに…?
「え? …それが、呪い…ってこと?」
バンダナ君が抱きついたまま、黙って頷く
そして、顔を埋めると
「ボクも、…大好きだよ…」
と、小さな声で言った。
「!」
「で、でも!…こんなこと、言われて困るよね?…気持ちわるいよね?? だから、ちゃんと、逃げてって…言ったんだ…!!」
言葉とは裏腹に強く掴まれた手は、僕の力ではそう簡単に振りほどけそうにない。
「…バンダナ君…」
改めて名前を呼ぶと、ずっと空っぽだったものが、満たされていくようだった。
魂の抜けた人形のようだった僕に、まるで新たに命が与えられたような気がした。
大切なその人を抱きしめる。
「…どこにも行かないよ」
「え…?」
「僕は、本当は泣き虫で、臆病で。そんな君が好きだよ」
「…本当に…?」
僕は頷いた。
彼はぐすっぐすっと鼻をすすったかと思うと、
わーっ…と、大声を上げて泣き出してしまった。
「…ありがとう。バンダナ君」
染み込む涙も、触れる体も全部、温かい。
「…大好きだよ」
(幸福な呪い・おわり)